バーニングマン/始まる


エントランスへ向かうと、ゆったりとした髭を蓄えた、30歳位のロマンス
グレーのオジサマが、ピンクのひらひらのワンピースを着て、忙しそうに
車両誘導をしていました。少し、ショックでした。

会場入りして、時折吹く強風に耐え得るようにしっかりマイテントを建てる為に、
30cmはあるペグを地中深く打たなきゃイケなくて、バカデカイハンマーとかが
必要で、隣のキャンプへ借りに行くと、100点満点の笑顔でココロ良く貸して
くれたのは、普通に全裸の、穏やかそうな老夫婦でした。少し、ショックでした。

私はアメリカという国へ来たつもりで間違えてバーニングマンという星へ
来てしまったようです。


バーニングマン(以下、マン)というイベントは、サンフランシスコから車で
11時間ほど北上した砂漠地帯で毎年8月の最後の週に、一週間ぶっ続けで
行われるパーティーです。

砂漠なので、一週間分の水や食料を自ら用意しないと、食べるモノが無くて
大変なコトになります。

砂漠なので、夜は眠れない程寒いし、昼は日射がギラギラと強く、激しい
気温差に対応する為の、様々な準備をしないと大変なコトになります。

但し、実際のトコロ、お金での売買などが一切禁じられているこの「マン」と
言う場所。欲しいモノがあれば「物々交換」か、「もらう&あげる」で
手に入れるコトが可能です。ていうか、何でもほとんど誰かに「もらえ」ます。
何故かと言うと、マンでは物事全ての原理が「シェア精神」で成り立っている
からです。
何でも一人じめせずに、みんなでシェアしよう。分け合おう分かち合おう。
そして自分に出来ることは、何でもしよう。助け合う。大げさなコトじゃ
無くて、ソレで喜んでもらえれば、自分もウレしい。という精神です。
だから食べ物だって寝場所だってオモチャだって、望むモノ全てが手に入ります。

ただ、いくらみんなが優しいからって、その優しさにアグラをかいては
イケません。あくまで「シェア精神」で成り立つ場所なので、誰かに優しく
されたら素直にキチんと感謝して、その感謝を相手に伝えて、そしてまたその
優しさを誰かに回さなければなりません。
ヒトに優しくする。という行為は強制されるモノでは無いけれど、マンにいると、
周りがあまりにスマイルしてくるので、せめて自分も返したい。と想って、
自然とシェア精神が身につきます。優しい自分になれます。


そしてマンでは、全てが「自由」です。
ヒトとして、あるレベルでの規律はあるモノの、基本的には何をやっても
OKです。
だから勝手な服着て、勝手なコトやってていいのです。

そしてマンには「全て」があります。
アート作品に興味があるヒトは、周りには腐る程アート作品が展示してある
ので勉強になると思います。パフォーマンスやデコに興味があるヒトも
同様です。踊るのがスキなヒトは、昼夜問わずどこかで音楽が鳴っている
ので一週間の間中、ずっと踊っているコトが可能です。やっぱり笑いが
大事。というヒトには、マンは見るモノ全てが大袈裟で爆笑し続けられます。
突っ込みどころ満載です。ていうか突っ込み切れません。キリがありません。

ちなみに私は羽を背負って天使のカッコをしていました。バカですね。
バカ丸出しだったおかげで、超声をかけられたり、ハグをされたりしました。
(バカって、バカだっていう理由で愛されるよネ!微笑ましいよネ!)
特にお婆ちゃん層に大人気で、午前3時位にフロアで、もらった綿菓子
片手に爆踊りしていると、「まあ、私のカワイイベイビー、こんな時間に
何しているの!?」とか、ブチューとか、されたりしました。
いや、お婆ちゃん。アンタもね。明け方だよ。何でフロアにいるんだ。
元気だなー。とか。

また、何故かカワイイ女子キャミソールを着たオッサン&男前を異常に
沢山見ました。気持ち悪い。とかでは無くて、初めは少し驚いたけれど、
段々慣れてきて、むしろ見かけるとウレしくなったりしました。

その他、フォークで出来たスカートを履くカワイコちゃん。
全裸に亀甲しばりの状態でシャッターを押し続けるカメラマン。
もじゃもじゃヒゲの、でもバッチリメイクのミニスカハイスクール姿のオッサン。
バレエのチュチュを着たオッサン集団。
見とれるほどキレイな全裸に、エナメルブーツ履いただけのエロいお姉ちゃん。
そしてそのブーツを舐める、全裸に赤いマントだけ身につけた坊主。
華僑がスキだから。という理由でクソ暑い中、スーツを着るアジアン。
全身を青色に塗りたくったドレッドのシヴァ神。

まあ、どう冷静に見積もっても、キチガイです。

あまりにキチガイなカッコのヒトが多いので、そのウチ、白いTシャツに
ジーンズのヒトを見かけると、あー普通だー。と安心したりしました。

そしてもちろん男女共に全裸も多く、でも別にエロい。とかでは無くて、
むしろ尊い。清い。神様だ!というカンジで。
どんな手の込んだスゴイ衣装を着ていても、やっぱり全裸が一番パワーが
凄くて、一番突き抜けてエラくて。そして一番キモチ良さげでした。
ええ実際、キモチ良いらしいですしね!

そしてあまりに暴走している巨大な建物&パフォーマンス。
サラリーマンのような宇宙人のような人形が円を作るオブジェ。
「モップでお掃除」という操り人形を使った寸劇。
アラビアのカッコした乳を放り出した女子集団のダンス。
女体をカタチどった貝をモチーフしにした巨大なランプ。
指定された場所を踏むとカワイイ音を奏でる巨大なハープ。
私は見ていないケド、尋常じゃ無い量の炎を飛ばしたり、電気を発電させたり、
もうメチャメチャな出来事が毎日数え切れない程、行われる!

そして夜になればあちらこちらで電飾がでこでこ輝いて闇を祝う。

日本で言う、お祭り、が超ハイテンションで一週間ブッ続けで行われる、マン。

何と言うか、他のヒトのコトバを借りれば、マンはキチガイ遊園地。
マッドディズニーランドだ!!!!

親子連れも沢山いるケド、子供はマンのコトを夏休みの絵日記に書いたり
するのだろうか。
砂漠へ行きました。ハダカのヒトがいっぱいいました。
お父さんとお母さんは踊っていました。僕も踊りました。
おもしろいオモチャと乗り物がいっぱいでした。楽しかったです。
でも先生はきっと信じないだろう。夢だと思うだろう。


この文章だけ読んで、
何言ってるの?この地球上にそんな狂ったトコある訳無いじゃない。
全部妄想なんじゃない?とか思うかもですが、本当にそんな場所なのだから
仕方ありません。

何言ってるの?この地球上にそんな狂ったトコある訳無いじゃない。
ドラッグ摂り過ぎなんじゃない?ソレで幻覚でも見たんじゃない?とか思うかも
ですが、申し訳無いですがケミカルはやらないヒトです。
超真っ当です。むしろ、ごまっとうです。
だから完全にシラフです。シラフで狂った世界をサバイブです。

むしろマンではお酒だけでも危険な程、アタマとか思考とか、ブッ飛びます。
常日頃、コップ一杯のビールで吐いていた私は気がつけばウォッカどころか、
ほとんどアルコールの味しかしない70度のロシアのお酒とか笑いながら
飲んでいました。
ソレだけでも十分生命の危険を感じる程、飛ばされました。

しかし更に特筆すべきトビ方をするのは日射病です!!!
暴力的な程に照りつける太陽の下、2〜3時間、水も摂らずに、休息も取らずに
ブッ続けで、てこてこお散歩していれば、何だか足元はぶよぶよとおぼつかなく
なってきて、アタマはぐりぐりしてきて、ロレツも弱冠回らなくなってきて、
でもニコニコしちゃって、誰とでも超フレンドリーにスマイル出来て、目に入るモノ
全てに爆笑出来ます。完全にアタマは真っ白なのでオチる要素も全くありません!
相当ヤバいです!!!日射病!!!!

超天然ノンケミカルアシッドです!!!!日射病!!!!!

但し、夜に必ず熱が出るし、状況を理解した上でキチんと休息を取らないと、
カラダはだるいし、アタマは痛いし、吐き気は止まらないし、確実に、オチます。
日射病は普通に大変です。病気です。
あと、ヘタすると普通に死にます。

あくまで自己責任ゲームです。日射病。



そんな風に一週間の間、毎日毎日、誰かとしゃべってしゃべって、フロアで
踊って踊って、建物やオブジェを探検して探検して、イカレたカッコのヒトを見ては
笑って笑って、子供のようにブッ倒れるまで遊んで遊んで。
たまにクラッシュしたり、たまにヘコんだり。それでも毎日ニコニコで。
忘れた頃にカラダが水や食事や睡眠を欲しているのをケモノとして感じて。
生きているんだなぁ。とか、ヒトが生きる上で、砂漠というギリギリの環境で、
想ったりして。

とにかく一週間、寝る間も惜しんで全力で、フルスロットルで、遊びました。
ええ、本当に楽しかったですよ!!!!!!バカ丸出しでした!!!
でもバカな方が楽しいので全然OKです!てへ!!!



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