バーニングマン/ナカ


3万人の観衆が見守る中、「バーニングマン」の象徴である「人間」をカタチ
どったビルほどの高さの、「巨大な偶像」に、火が付けられます。
ソレはソレは、普通に、大火事。


一週間続くストーリー性のあるパーティー。長いようで短く。
自分で自分を追い込んだりして、もう帰りたい。とか何度か思ったりもしたけれど、
ソレ以上に楽し過ぎて、永遠に続いて欲しい。
むしろココ、プラヤ(バーニングマン会場)にこのまま来年まで住みたい。とか、
本気で思ったパーティー。
でも最終日、20メートルはあるマンが、燃えます。
マンが燃えるコトによって、祭りは終わりを告げます。

何十人もの幻想的な「火の舞」の後、マンに火がともる。

ごうごうと、燃える。ごうごうごうごうと、燃える。
高く高く、空に届いてしまうんじゃないかと思うほど、炎は伸びる伸びる。
まるでイノチを持つように激しく踊る炎に魅せられて私は呆然と
立ち尽くす。
ただただ、炎を見つめる。ごうごうごうごう。

ゆらゆらと踊り狂う炎。
火の粉が舞い散る。私の頭上にも振りかかる。隣のヒトの髪は燃えている。

目に映るソレは凶暴で、近づくモノ全てを焼き尽すような勢いに、私は少し
恐怖を覚え、あとずさり、する。

そして炎がおこって急に地上の温度が上がったので竜巻が起こった!
天に向って唸りをあげる竜巻。そのバカデカイ竜巻が、こっちに来るッ!!
ヤバイってヤバイって!巻き込まれたらマジでヤバイ!
竜巻に巻き込まれると空に吸い上げられちゃうのかな?
ソレはソレでどうなっちゃうのかおもしろそうだけど、でも危険でしょ?
逃げなきゃ!でもヒト多過ぎて逃げるに逃げれないよ!
良く見たらウレシそうに竜巻に向って走ってゆくヒトとかいるよ!
あんたらバカか!

ふと周りを見渡すと、興奮した観衆は両手を上げ声を上げ、まるで
あらかじめ決められていたかのような儀式のように、
ゆっくりとゆっくりと偶像を燃やす炎の周りを回り始めた。
ヒトという濁流に飲み込まれて、私もゆっくりと歩き始める。
炎の熱のせいかな?何だかアタマがじわりとするよ。足元がユルいよ。

一週間、プラヤで過ごして見たモノ、経験したモノ、全ての総合体である
マンが暗闇の中、目の前で燃える。という状況が。そして更に、大きな火が、
炎が、あまりにリアルで、五感とか思考とか、全部全部もってゆかれる。
カラッポになって、クチをポカンと開けて、ただただ炎を見ている。
「わけわかんねー。」とか、そういうコト、思う余裕も、全然、無い。
ただただゆっくりと、炎の周りを、流されて流されて、歩く。

時々、自分の立っている場所が、ひどくあやうく思えて、不安になって、
友達の手を両方の手でぎゅっと握ったりする。
離れないように。離れてしまわないように。
不安で不安で、子供のように、強く強く手を握り締める。


ふと気がつくと、炎を取り囲む輪の外には、またいくつかの輪が出来ていて
爆音にあわせてダンスが始まっていた。

歓喜と、狂気の、ダンス。

踊る輪の頭上には、プテラノドンをカタチどったヒトの何倍もの大きさの人形が
操られ、2羽、戦うように踊っているのが炎に照らされて、闇夜に白く浮かび
上がって見える。

何だか、この世の終わりを祝っているようで、私は、クラクラする。

私は今、グラグラしているよ。グラグラしているよ。
何だか怖いよ。怖いよ。

・・・変だよ!ココ!

一旦落ち着きたいよ。体制を立て直したいよ。センターキャンプ
(以下、センター・総合インフォメーション&休憩所のようなモノ)に戻りたいよ。
アソコなら明るいし、ソファもあるし、ホットチョコレートだって、チャイだって
飲めるよ!
センターにゆこう!センターに!!

私のあまりの動揺っぷりに、友達は2人とも付いて来てくれるコトに。


でも、でもね、道が全く、分からないよ。

いつもだったら夜でも、どれだけ真っ暗でも、会場中央にそびえたつマンから
向って、右の方向にはコレコレこういう建物があって電飾がデカデカ光ってて、
それでマンから向って、左の方向にはコレコレこういう建物があって電飾が
デカデカ光ってて、そしてマンから真っ直ぐのセンターは、空へ向って大きな
大きな明るいライトを何本も何本も照らしているから遠くから見てもスグに
方向が分かるんだ。

でも今日は、炎が明る過ぎて、周りの風景や光がかき消されてしまっているよ。
周りを見ても、ヒトしか、見えない。
全く方向が、分からないよ。

一生懸命に冷静に考えようとするんだけど、考えれば考える程、焦るし、
焦れば焦る程、アタマがぐるぐるぐるぐる、マワる。
しっかりしなくちゃ。
冷静にならなくちゃ。
正気にならなくちゃ!

気がつけば3人で同じトコロを行ったり来たりしている。
コレは危険だ!闇雲に動いても、ムダに体力を消耗するだけだ!
体力の消耗はイライラを引き起こすし、余計に的確な判断が出来なくなるよ!
ダメだダメだダメだ!どうしようどうしよう。どうしたらイイの!?

呆然と立ち尽くす3人の前に、電飾を全開で施し、爆音を放出しまくる個人
所有の、自由に乗ったり降りたりが可能な車(以下、アートカー)が通りかかる。

そうだ!アートカーに乗れば、とりあえず炎から離れたトコまで移動してゆくに
違いない!上手くゆけばセンターまでゆけるかも!

走り去ろうとスピードを上げるアートカーに飛び乗る。


そのアートカーは少なくとも高さが3メートルはあって、その屋根の上に陣取る
コトが出来た私達は、今、という、この状況の全貌を眺める。というチャンスに
恵まれる。


見下ろすプラヤは、
ソレはソレは、天国と地獄が両方同時に存在するようなこの世の果て!


暗闇の中、浮かび上がる沢山の沢山の踊る人達。
ニコニコ笑顔だけど、暗いから、少し、怖い。
爆音のダンスミュージック。そして歓声。
常に常に誰かが叫んでる。発狂?
広く広く果てしない果てしない砂漠。
そもそも果てなんてあるのかな?

眺めていると、頭下の沢山のヒトがアートカーに向って笑顔で手を振って
くれる。手を振りかえす。天皇のように手を振る。手を振り続ける。
少し、ウレしくなったりする。
降りておいでよ。一緒に踊ろうよ!という身振りをされる。
でも私は、夜の闇。という恐怖に取り付かれてしまったので、もう、
動けない。降りれない。

アートカーの進むままに、流れる景色を眺め続ける。
視界に入るモノ全てが衝撃的過ぎて、見たそばから流れてゆく。忘れてゆく。

何だか、スゴイトコロにきちゃったなぁ。と、今更ながらに、想う。


そしてある地点でアートカーは止まり、皆、降りてゆく。
ドコまで来たんだろう。随分長い間アートカーに乗ってた気がするよ。
長い距離走ったんだろうなぁ。センターに近くだとイイなぁ。

アートカーの外付けのハシゴをヒトの手を借りて、降りる。
周りを見渡すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

炎が?また?近くに?見える・・・・・?!

元の位置に戻って来てる!!!!!!!!

ガクゼンとしながらもちょっと笑いそうな、私。
バカだなぁ。って言うか、むしろそんなバカな自分達がイトオシイ。


上から見たからセンターの方向も何となく掴めたし。と言って友達が
歩き始める。私はただ頷いてついて行く。
ずんずんずんずん歩くも、あんまりにもボーッとして歩いていたので、
多分マンからセンターまでは歩いて数十分とか、かかるハズなんだけど、
気がついたら本当にセンターに辿り着いたので、ビックリする。
とりあえずココまで来れば、安心だ。チカラが、抜ける。

「ちょっと炎とかもう一度見てくるね。踊りたいし。」
そう言ってまた炎の方向へ走り去る友達を横目に、とりあえず私は未だ
グラグラしていたのでぼんやりしながら、道に迷いつつキャンプへ戻る。


キャンプへ辿り着くと、何人かが輪を組んでお茶をしていて、私も
ストンと腰を降ろす。

「ウォッカとか、飲む?」スグ近くなのに遠くに聞こえる声。
「ああ、はぁ。すいません。」ぼんやりと答える。
「ビールは?」更に遠くに聞こえる。
「ああ、はぁ。すいません。」やっぱりぼんやりと答える。
「コーラは?」もうドコから聞こえてくるのか分からない。
「あー、・・・はい。はい。すいません。」答えているのは誰?
「お菓子も。」実際は聞き取れていない。
「はぁ。」既に反射で会話している。

随分と時間が経ってから差し出されるコーラとお菓子。
「ああ、ごめんなさい。ムリです。すいません。」
「?さっき、いる。って言わなかった?」
もうダメだ。多分一応会話は成立しているんだろうケド、
もう何もかもが遠い。ていうか私自身が遠い。
一度、テントで眠ろう。
何事か言って、輪を立って寝袋に潜り込む。浅い眠りにつく。


そして深夜、一人目を覚ます。
眠って体力も回復したせいか、さっきまでのぐるぐるが嘘のように、
アタマは妙にスッキリしている。
むしろ、満たされたような、ココロ持ち。
さあもう一度確認しよう。
マンを。自分を。
燃えて無くなってしまったマンへ向ってキャンプを出る。

あちこちで鳴り続ける音。
期待通り、完全にヒライたカオしたバーマー(バーニングマンフリークの
呼び方)で数え切れない程沢山あるフロアはどこもいっぱいだ!
マンは今日で最後なので、みんなハシャギ過ぎな程にハシャいでる!
あんな動きをしてたら死んでしまうんじゃないかと言う踊り方を沢山見る
コトが出来るし、そして沢山の沢山の笑顔!!!!!
みんなの目盛りは完全に振り切っちゃってるよ!!

気がつくと私も音と光の溢れるフロアに引き寄せられて踊っていた。
地面を踏みしめ、背筋を伸ばして、夜空を仰いで、空気を咳き込む程に
吸い込み、五感の全てと、「手の平」と言う第6感。そして「カラダ全体」と言う
第7感の全てを震わせて自分に刻み込む。
この場所を忘れないように忘れないように。

ひとしきり、プラヤを、浴びたよ。

さあ踊ろう!!!!

そしてフロアでは目が合うヒト全てに笑顔でセイハロー!
沢山沢山ハグをして、沢山沢山ほっぺチューをする。
そして交わされるコトバは「ハッピー・バーニングマーン!!」
何て何て幸福なコトバ!!!!

スモークはフロアを浮き立たせて、ブラックライトは眩しくて、レーザー光線は
波を打つ。知らない誰かと手を取り合って踊る。
「調子はどうよ?」なんて、毛皮の下にキャミソールを着た男前に聞かれる。
サイコーに決まってるじゃん!!!!!
「ナンバー1に楽しいとかグレイトとか日本語で何て言うんだ。」
とか聞かれるので「SA・I・KOー!」と教えると、
「PSYCHO?(読み/サイコ・訳/キチガイ)」とか含み笑いで聞きかえされる。
アハハハハハ!!!!SAIKOーはキチガイか!
ソレだソレだ!ソレでイイよ!ソレでゆこう!むしろソレ希望!!
もうココは本当にバカでハッピーでニコニコなヤツばっかりだ!!!
さあ踊ろう踊ろう!!!もう足が吊っても気にしないよ!!!

しかしさっきまでの圧倒的な恐怖は何だったんだろう。
完全に自分のキャパを越えてしまった、あまりに巨大な現実に、カラダが
拒否反応を起こしたのかな。だとしたら何て小さな私のキャパ!
あまりにもあまりにも現実離れしているリアル過ぎる現実。目の前の景色。
しかしハナシがデカ過ぎて、全然ピンとこないよ!

そして実際に足が吊りかかる頃には、闇夜が白々と明けてきた。
さあ、サンライズだ!!!!!



地平線が一望出来る見晴らしの良い場所まで行って、砂漠に腰をおろす。
ウキウキしたキモチが抑えられなくて、砂を掴んだり離したりを繰り返す。
そわソワそわソワする。

さあ段々、明るくなってきたよ。
いつも、もくもく雲さんで溢れているプラヤの空だけど、今日は、正に
雲ヒトツ無いイイ天気!

太陽が、ゆっくりゆっくり、でも急いで急いで、カオを出す。

ぐんぐんぐんぐん。

今日は本当に山から登ってくるような、太陽だ。
ちょっとづつ、ちょっとづつ、太陽がニコニコのカオを覗かせる。
光が溢れ出したよ。
少しづつ少しづつ、光の量が増えてくるよ。
まぶしいよまぶしいよ。もう見ていられないよ。目を手でおおってしまうよ。
ぐんぐんぐんぐん上がってくる!

大きく大きく、丸い丸い、太陽!!!!!!

うゎーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

太陽、デカーーーーーー!!!!マブシーーーーーーーー!!!
スゲーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

マンに来てから、毎日仕事のようにサンライズを確かめていたけど、今日の
サンライズはスペシャルだ!!!
むしろ今まで生きてきて見てきた中で、最高のサンライズ!!!!

太陽さん太陽さんありがとう!!!!
うっかり、声を出して太陽に感謝しちゃって、更に太陽に向かって、
ごきげんよう。また明日。なんて大きく大きく手を振って、テントに戻って、
太陽のニオイに包まれて、今度は深い深い眠りにつく。
おやすみなさい。



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