アルゼンチン:1 「壮絶な風景に死にそうになる」


パタゴニアのブランドマークのモデルになった「フィッツロイ」山でトレッキングを
する為にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスから飛行機に乗る。

眼下に広がるは、上半分は白色、下半分は自身の影で薄白色の粘土っぽい形状の雲。
そんな雲の濃い影が浮かぶ深い深いエメラルドグリーンの湖やこげ茶色の丘陸。
遠くには白い雪の被ったブルーマウンテン。
トイレに行きたいのも我慢させる、窓にオデコをムニュッとはりつけさせられる
素晴らしい風景!


トレッキングなんて人生初。
大学生の時、富士山の山小屋で1ヶ月の短期バイトをした際に山頂を目指したけど、普通に
1時間位登って即!挫折した経験を持つだけあって根性はありません。


宿で山の情報交換するクライマーは当然のように全員が登山服に登山靴。
ステッキ片手の人や、テントや寝袋、ドコまで行く気なのか簡易無線機を担いだ重装備の人も。
一方私は、スニーカーにジーンズにウィンドブレーカーという「山をなめるな」と
怒られそうな軽装。

疲れるのキライだし、30分位で下山しようなんて思いつつ、
かろうじて「多分コレが遊歩道だろう。」というようなケモノ道を単独でぐんぐん進む。

すると進めば進む程に次々と息を呑むような風景がクルクルと現われる!

細い細い曲がりくねった川の流れる、地平線まで広がる赤茶色の大地!
でんと座り込む見上げないと全部を確認出来ない大きさの岩々!
道の両脇からわさわさと迫るように覆い被さって生える背の高さの緑の木々!
丘にぽつんとある大きな岩の上には、先に続く道を見据えた草食動物の巨大な頭蓋骨!
にょきにょき伸びた木々に埋まる斜面には赤い葉っぱがいっぱいにぶら下がる!
水辺が太陽に反射してキラキラ輝く底の見える澄んだ湖!
葦が茂る湖の向こうには、紅葉した木々を持つ山と、険しい岩肌を持つ山と、
そしてそして、てっぺんだけ白く雪の積もった青色の高く高くそびえるフィッツロイ山!

あーあーあーゴメンゴメン。凄いわ。ゴメンゴメン。
凄過ぎる。

なんつーか、こういうのを「絶景」って言うんだね。多分ね。

何だか一生分の凄い風景を見ているみたい。
もうもう、おなか一杯!ご馳走様!!

久々に、コレを見る為に旅に出たのかな。を噛み締める。


「風景の良い場所を散策する」という行為の予想以上の楽しさに、
「上を向いて歩こう」なんてフンフン歌いながら、
あっちの方が景色良さそうだな。なんて、遊歩道をガンガン外れる。

時々ウッカリ元の道に戻れなくなって、少し焦って枯れ枝をパキパキ踏みしめて、
通って来たと思われる風景を確かめながら太陽の光の漏れる薄暗い森を行く。
シーズンオフなので人もいなくて道を尋ねる事も出来ない。看板ももちろん無い。
時々あんまり深くまで入り込み過ぎて、完全に道を見失って、遠くで鳥の鳴く声が
不安を煽る中、「こういう風にムチャなヤツが死ぬのかな」とか脈拍を早くする。
遊歩道っぽい道に戻れると嬉しくて安心してガッツポーズ!


この街に入る手前の街で、チリのパイネ国立公園で22日間単独トレッキングをしていた
ドイツ人に会ったよ。
それトレッキング超えてるじゃねーか!ほとんど遭難じゃねーか!とか思ったけど、
多分「意図的に迷う」という、相当楽しい事をしていたに違いない!
しかも下山直後だったらしくて「ちょっと疲れた。」だって。
それだけ長いコト山の中にいたら疲れるの当たり前じゃねーか!クライマーはバカばっかりか!
チャリダーとレイバーと同様な「やり過ぎ」なヤツばっかりか!

でもまあ、山なんて登るヤツの気が知れなかったけど、ちょっとわかるようになったよ。
山、楽しいね。


そんな訳であんまり楽しくて3日間ブッ続けで日の出から日の入りまでトレッキング。
足パンパンですわ。



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