アメリカ:2 「グランドキャニオンでリアル泡を吹いて死にそうになる」


とにかくムダにデケエ谷が沢山あんだよ!グランドキャニオン!!!


案内地図をもらう為にインフォメーションセンターに行こうとパーキングでレンタカーを降りて
チラリとガケ側を見るとソコはもう既にグランドキャニオン!!!!

もうもういきなり谷!谷!!谷!!!

マジでデケエ!しかもマジで深え!
何だコレ!谷か!いや谷なんだけど!
つーかマジで「いやいやいやいや!」としか、言えない位、ムダにデケエ!
しかも薄ら笑いでネ!口元二ヤニヤしちゃってネ!おっさんかよ!

マジで「スゲエ」とか「ヤベエ」とかの感嘆の声すら、出ない。

とにかくとにかく「いやいやいやいや!」としか言えないあまりに雄大な連なる沢山の谷々!


そんな吐くかと想う程デカい渓谷をコンドルが高く低く、すいすいと、飛び回る。

「イイナー。気持ち良さそうだな。私も飛びたいなー。ていうかむしろ私にだって飛べる!」
とか想って絶壁をふと助走をつけて駆け出す衝動に駆られる位、マジでデカい。



コレは渓谷歩いとかなきゃデショ。とハイキングロードへと歩を進める。

初めはおやつは300円以内の遠足感覚で「わー鳥のさえずりが聞こえるね!リスさんもこんにちは!」とか
足取りも軽く谷底へ向かってウキウキ歩く。

そして2時間位歩いて、疲労も困ぱいの段階で、気づく。

ゴールの谷底が全くもって全然ちいともかすりとも見えやしねえ!

趣味は体を鍛える事でっす!というカンジの超マッチョが息を切らして下から上がってきたので
「ハアイ☆ナイスガイ☆このハイキングロードはどの程度の行程なの?」とかさわやかに聞くと
「ハアイ☆プリティガール☆このコースは軽く見積もって片道5時間、往復10時間はかかるよ!
みんな行きに1日、帰りに1日と考えて、谷底で一泊するのさ!でも僕はもう途中でギブアップさ!
じゃあネ☆」とか笑顔で言われる。

いやいやいやアンタの体格&体力で片道5時間、往復10時間って事は、
私の体格&体力で片道6時間、往復12時間位って事?

死ぬって!普通に死ぬって!ムリだって!
その時点で即お手上げ☆を決め込み、Uターン。


マジでキツくて急な山道を、少し朦朧とする意識の中、半泣きになりながら、泡吹きながら、登る登る。
マジで泡吹きながら、登る登る。

人生初☆リアル泡。
つーか泡吹くなんて経験、出来ればしたくなかったよ。



ムリなコトはしちゃダメね!なんてハイキングは普通に諦めて立ち入り禁止の手すりの向こう側の大地で
大自然をベッドに木陰でお昼寝。

太陽が動くと木陰も動く。影が無いと暑いから私も寝てるケド無意識で動く。
目が覚めたらガケ危険ギリギリラインでヨダレをたらしていて、マジで少し、焦る。



そしてそして明日と言う日が生まれる為に、今日と言う日は終わりを告げる。
グランドキャニオンは太陽を飲み込む。

少し、雨が降ってる。
雨だからあんまりキレイには見えないかな。なんて心配に反して、そんな雨の粒が霧みたく薄く薄く、
宇宙まで手を伸ばす大きな大きな空いっぱいに、広がる。

雲の隙間から少しだけ覗く太陽の光が放射線状に漏れて、霧の渓谷をスポットライトよろしく照らす。

渓谷は白やら青やらムラサキやらピンクやら黄やら、挙句、黄金色のキラキラキラキラ幻想的な光に、満たされる。

ああ、キレイだな。キレイだな。
・・・夢みたいだな。


そんなミラクルを眺めながら、ぼんやり、想う。

例えば・・・例えば、ツラいコトやシンドいコトは1人でも乗り越えれるよ。頑張れるよ。

でも、でも、七色の大きな大きな虹だったり、乱れ咲くキレイなキレイな花々だったり、美しく美しく瞬く星空だったりの、
ココロが踊るようなステキな風景は・・・誰かと・・・分かち合いたいな。

手を繋いで、時々目を合わせて、何も言わずに・・・ただただ、ただただ・・・眺めて・・・いたい・・・な。


・・・あのヒトと手を繋ぎたいな。アタマを撫でられたいな。キスしたいな。ギューッって、したいな。

あのヒトは今、何を・・・してるかな・・・。元気、だと・・・嬉しいな・・・。

何で私は・・・1人でココにいるのかな。何であのヒトはココに・・・いないのかな。
何で一緒に・・・いないのかな・・・。


ねえ?・・・いつか、いつか・・・またこの美しい風景を・・・あのヒトとあのヒトと一緒に・・・
眺められる・・・かな・・・?



長い間太陽を見つめ過ぎて目が、チカチカするよ。
チカチカ、チカチカ、するよ。

あんまりあんまりチカチカチカチカしちゃうから・・・あんまりあんまりチカチカチカチカしちゃうから・・・
まぶたを手でおおったら・・・ほんのちょっとほんのちょっとだけだけど・・・
涙が・・・涙が・・・こぼれてた・・・よ。



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