ブラジル：１　「南米のゴアで日本人宿をやろうとして死にそうになる」


南米のゴア、トランコーゾ入り！

到着は夕暮れ。迎えてくれたのは小さな白い教会と、緑の芝生でサッカーしてる子供達。
暗くなるにつれお店のキャンドルの明かりがヒトツヒトツ増える。
バースディパーティをやってる様子のカフェからは歌声が聴こえてくる。
気がつけば頭上に広がるミルキーウェイ。幾つもの小さな光も流れる。夜間飛行する機体が星の間をぬって飛ぶ。
あんまり全てが美しくて眩しくて、バックパックを抱えたまま呆然と立ち尽くす。ていうか何だよその嬉し過ぎる風景！

とりあえず適当な宿に落ち着き、翌朝目が覚めれば半透明色のヤモリと目が合う。
隣では別の２匹のヤモリがはもはも噛みあっこしてジャレあってる。おはようのチュウをしてるみたい。
散歩すればココロを踊らせるのは、あちこちに咲き乱れる赤やピンクのハイビスカス。
真っ昼間から白い小さな月がうっすら見える青空の下、少年達が浜辺で裸足サッカー。
何故か真横ではちびっこが一人、砂まみれになりながら延々逆立ちの練習をしてる。

耳をすませば葉っぱのこすれる音。波の音。歌声と音楽。子供の笑い声。
何だか、神様ごめんなさい。とかうっかり祈ってしまいそうになる。
トランコーゾは正にトランキーロ。街全体に流れる時間とか超のんびりしていてステキ丸出しでムダにウットリ。


２、３時間かけてビーチ近くに快適宿を見つけて早速移動＆長期滞在。
街の中心部から遠く、真っ暗な森のでこぼこ道を通らないと帰れない。
初めは異常にビビってたけど、この街の闇は穏やかなので直ぐに慣れた。

宿にはニャンコが１１匹いて、中でも黒と白のまだらのチビニャンコのミミィが妙に懐いてくれて、
いつも私の部屋で小さな寝息をたててた。


小さい街なので１週間もいると知り合いも増えて来て、道すがら「ユーコ！」なんて声をかけられる。
でも時々ヨーコ！とかイーコ！とか呼ばれる。ピーコ！とか。誰だよ。
何も言わなくてもいつもと同じ品が出てくる甘物屋とかも出来てきて、何だかこの街に受け入れられたみたいで
ちょっと嬉しい。
月が時間を追って東から西に移動するのが良く理解出来るこの街で、子供と影で千手観音ゴッコしたり、
宿の犬のしっぽを追いかけて散歩したり、高校生とカメハメ波の練習をしたり、
４０歳位のマダムとファッションショーしたり服の交換をしたり、何故か浜辺で馬が寝ててダイブ驚かされたり。

雨が降れば室内にいるのに、しとしと雨音と一緒に波がザザザと寄せる音も聴こえたり、
更にはタイコを始めると、虫の羽声がぶいんと激しくなったので、雨と波と虫とタイコの４重セッションを行ったり。
太陽が顔を出せば高台からの眺めで、海は深さによって色が何十種類も違うんだって初めて知ったり。

ヒッピーの友達が体調を崩したけど、薬とかのケミカルなモノは出来るだけ摂らずに薬草をすり潰して飲んで治してて、
ナチュラリストの気合に驚いたり。また寒い地域では会話に必ず「寒い」って単語が出てくる。
でもこの街では会話に必ず「食べる」「寝る」「泳ぐ」という単語が出てきて、
何だか幸せな街だなぁ。オイ！なんて密かに思ったり。


こんなキラキラする街に長いコトいたら、何だかイイ人になってしまう！とか意味不明の焦りを感じつつも、
毎日をのんびりのんびりと、過ごす。
とにかく環境も人も大変風通しの良いキモチの良い街。何より、ロコ（地元民）の人がトラベラーを
トラベラー扱いじゃ無くてロコ扱いしてくれるのが、とっても嬉しい。


そしてパーティプレイスとしても有名なこの土地のフルムーンパーティーに参加！
浜辺でガシガシ踊る。知らない誰かと「最高だね！」なんて、ぎゅって強いハグ。
笑顔が満ちる満ちる。幸福感が溢れる溢れる。波が歌う。木々も歌う。星も歌う。
大きな大きな丸い丸い月は、七色の光を放射線状に放つ放つ！

サンライズと同時に大きく盛り上がるフロア。雲は桃色だし、空は青からオレンジにグラデーションだし。
超ストーリー性のあるパーティで、気がつけば私は生まれたばかりの太陽を見つめながら少し、泣いてたよ。
そして良いパーティーというのは、いっぱい踊れた。とか、凄く盛り上がった。とかではなく、
各自がイロイロ考えたり想ったり。そういうのが大事なんだ。というバーニングマンで会った大阪っコのコトバを
思い出したり。

そんなゆるゆるとした日々を過ごしているウチに、いつ間にかベネと、親しくなって、いた。
ベネは手作りアクセサリーを売りながら旅をしているヒッピー少年。短く刈った髪。褐色の肌。
いつもニコニコ笑ってて、元気で無邪気で素直で。常にみんなに囲まれてた。

アホかっちゅー程にバカでけーピカピカ太陽の下、ベネと手を繋いで砂浜を延々歩く。
途中、ベネはヤシの木に登って実をもぎってくれる。石で割って中身を半分こして飲む。
時折顔を見合わせて、笑う。２時間程歩くと、ようやく目的のビーチに。

２人して子供のよにパシャパシャ水をかけあう。波間で追いかけっこ。疲れれば木陰に横たわる。
何だか青春いちご白書模様。沢山の言葉はなかったけど、ただ一緒にいるだけで、隣にいるだけで、もう、十分だった。

去り際、ベネはハイビスカスの花を髪飾りとして挿してくれる。
マンガみたいな贈り物に最早私のトキメキはＭＡＸに。
このままベネと結婚して、私はこの土地で日本人宿でもやろうかとダイブ真剣に考えたり、した。


ベネと別れ夕暮れ時、何だかちょっと頭がクラクラする。炎天下を数時間歩いたし、多分日射病だ。
熱が出るかも。とマンゴやリンゴのフルーツとミネラルウォーターを３日分。
また日本から持参した冷えピタとホッカイロを枕元に用意して、早めにベットに横たわる。

案の上、星のふる時間には熱を出す。うんうん唸る。お腹も急降下したりして、結局丸１日寝込む。
1人旅だし、誰にも看病してもらえないし、旅で何度も寝込んだりしてるウチに、いつの間にか体調が悪くなるのを見越して、
寝込む準備まで出来るようになった。最早寝込むのも慣れたモノだす。ていうかそんなの慣れたくねえよ！


その後も、ベネとドイツ人のベビーシッターのバイトをしたりして、何だかムダにキラキラした日々を過ごす。
でもこのままだとベネのコト、本気で本気で好きになってしまいそうだったので。でも私はまだまだ旅を続けたかったので。

別れがツライから明日の朝の出発は見送らないでね。と最後の海デート。
星があんまりしゃらしゃら鳴るから、繋いだ手がいつまでも離せない。
月があんまりるりるら歌うから、２人何も言わず裸足でいつまでも砂浜を歩いてた。

翌朝は快晴。太陽は輝く。全てが眩しく輝く。神様、ベネの今後がどうかどうかステキなモノでありますように。
なんて祈る私を乗せて、バスは虹色の街を背にぐんぐんぐんぐん走る走る。



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