ブラジル:5 「ブラジルのヒッピーの聖地で死にそうになる」


南米のゴア。ヒッピーの聖地、トランコーゾに滞在。
到着は夕暮れ。迎えてくれたのは小さな白い教会と、
バースデーパーティの歌声が聴こえるカフェのキャンドルの明かり。
気がつけば頭上に広がるミルキーウェイ。幾つもの小さな光も流れる。
夜間飛行する機体が星の間をぬって飛ぶ。
ていうか何だよその美しすぎる風景!

翌朝目が覚めれば枕元で半透明の2匹のヤモリがはもはも噛み合ってジャレてる。
あはようのチュウをしているみたい。
雨が降れば室内にいるのに、しとしと雨音と一緒に波がザザザと寄せる音が響く。
タイコを始めると、虫の羽音がぶいんと激しくなったので、雨と波と虫とタイコの4重セッション。
晴れの日は葉っぱのこすれる音までしちゃう。うっかりイロイロ祈ってしまいそう。


長期滞在を決め込んだ宿はビーチ近くで街の中心部から遠く、真っ暗なでこぼこ道を通らないと帰れない。
初めは異常に怖がっていたけどこの街の闇は穏やかなのでスグに慣れた。
宿にはニャンコが11匹いて、中でも黒と白のまだらのミミィが妙に懐いてくれて、
いつも私の部屋で寝息をたてていた。

小さい街なので1週間もいると知りあいも増えてきて、道すがら「ユーコ!」なんて声をかけられる。
でも時々ヨーコ!とかイーコ!とか呼ばれる。ピーコとか。誰だよ。
何も言わなくてもいつも同じ品がでてくる甘味屋とかも出来てきて、何だかこの街に受け入れられた
みたいでちょっと嬉しい。


そしてパーティプレイスとしても有名なこの土地のフルムーンパーティに参加。
浜辺でガシガシ踊る。知らない誰かと「最高だね!」なんてぎゅって、ハグ。
波が歌う。木々も歌う。星も歌う。大きな大きな丸い月は、七色の光を放射線状に放つ放つ!
サンライズと同時に大きく盛り上がるフロア。
雲は桃色だし、空は青からオレンジにグラデーションだし。
超ストーリー性のあるパーティで、気がつけば私は生まれたばかりの太陽を見つめながら
少し、泣いてたよ。

こんなキラキラした土地に長いコトいたら、何だかイイ人になってしまう!とか
意味不明の焦りを感じつつも、その場所でベネと出逢ったん。

ベネは褐色の肌に短髪のブラジル人。常にニコニコ笑ってて。
太陽みたいなこの人と付き合えるってなって、本当に嬉しかった!

でもある日、
「そういや来週からサンパウロでボランティアやるんだ」。
唐突過ぎる発言に、おもわず飲んでたお茶も噴いちゃうさ!
気にせずベネは続ける。
「海外支援とかやりたくて。将来は食糧系のフェアトレードを・・・」。

何ソレ!?超かっこいいこの人!!
環境のコトとかしっかり考えてるのね!ステキ!
この人が私の探し求めた運命の人に違いない!!
だって外見も思想も超好み!キャー!!!

ていうか私もボランティアやりたいです!
「本部に問い合わせてみるよ」
有難う!!!


すげーな出逢っちゃったよ!運命の相手!
まさかこんな場所で出逢うなんて・・・。


そうして一緒にいれる時間を惜しむように、出来るだけ2人でいた。
ある日のは、アホかっちゅー程にバカでけー太陽のもと、2人でビーチデート。
手を繋いで砂浜を延々歩く。
途中、ベネはヤシの木に登って実をもぎとってくれる。石で割る。
かわりばんこに中身をごきゅごきゅと飲む。顔を見合わせて、笑う。

砂浜では子供のようにパシャパシャ水をかけあう。波間で追いかけっこ。
疲れれば木陰に横たわる。何だか青春いちご白書模様。
たくさんの言葉は無かったけれど、ただ一緒にいるだけで、隣にいるだけで、もう、十分だった。

帰り際、ベネはハイビスカスの花を髪飾りとして挿してくれる。
超絶ロマンティツク!昔のまんがか!お前は!
やっぱり運命の人・・・!!!!!!

でも美しい日々は長く続かず。

ベネの出発が明日に迫ったその日。
「やっぱり私もベネについてく!」私が言う。
「でもキミはこの後、アメリカに行くんだろう?
まず自分の決めたコトをきちんとやらなきゃ」ベネが答える。
「旅なんかどうでもイイ!ベネについてく!」私が繰り返す。
「ダメだよ。まず自分の頭で考えるコトをしなきゃ。次に自分の足で立たなきゃ。
どうせキミは2カ月後にはボランティに入れるコトになったんだから。
ソレまで良い旅をしておいでよ。
ボクだって離れるのはつらい。でもお互いのためだよ。」ベネが続ける。
「でも・・・」イヤイヤする私。

「だからコレ・・・」
ベネがゆっくり手をさしだす。

指輪・・・・・・・・・・・・・・・・・!
「安物だけど」ベネが照れくさそうに言う。
「ベネ・・・。
待っててね。必ず行くから!一緒に・・・」泣きそうな私。
でもその時、ベネが今までで一番嬉しそうな笑顔を見せてくれた。


その日はいつもと違う夜デート。
星があんまりしゃらしゃら鳴るから、繋いだ手がいつまでも離せない。
月があんまりるりるら歌うから、2人何も言わず裸足で砂浜をいつまでも歩いてた。
その日、私は彼とベッドを、
共にした。


翌朝は快晴。
街を出るバスに乗るベネを見送る。
でもわざとそっぽを向いたままにした。
さみしくさせてやる。
私を引きずらしてやる。


その日も海で泳いだ。
相変わらず波はしょっぱかったけれど。



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