札幌、アイヌモシリ1万年祭ライブレポ


東京からJRを10回乗り継いで24時間かけて、ようやくようやく辿り着いた北海道。
ONSENS友達のアキコさんと札幌駅で合流して、ライブ会場となる小学校の音楽室へと続く階段を昇ると、
ソコにはそう、ピカピカに輝く暑い暑い季節への扉が、
こんにちわしてたよ。


アキラさんの挨拶の後、タケちゃんの激しくかき鳴らされるギターの音が響く。
“今日のライブに来てくれて本当にありがとう。「wake up」さあ、各自の目覚めを始めよう”
なんて宣言するような曲『Be here now』でライブは幕を上げる。

ずしりと胸に響く『背中』に続いて、何だかドキドキしちゃう『インラケチ』!

嬉しさがじわーって広がる『Beautiful』!

誰かを何かを恋焦がれる想いがきゅうきゅうする『落涙』!

しみるしみる、でも「そうね」って思える『リストカッター』!

とっしり穏やかな心持になるよ『レインカネーション』!
人は、そう人は何度生まれ変わっても、大事な人とは必ず出会えるんだよね?
もし、もしソレが本当なら、出来れば出来ればでイイから、そう出来れば出来ればでイイから、
私は何度生まれ変わってもその度に、ONSENSに会いたいよ?

そして始まるヤオさんとリエちゃんのスーパーセッション!!
時々チラリとリエちゃんの方を見守りながら父性で力強くリードするヤオさん。
懸命についてゆくリエちゃん。師弟関係のようであり、兄弟のようでもあり、
親鴨とその親鴨に全信頼を捧げて後ろをついてゆく子鴨のようにも見える。
強烈な音の振動に、思考とか全部吹っ飛んで体が勝手にキャーッって動いちゃう!!
イエイエイエイエ!!!

でもせっかく体温がカーッって上がった私を『war』の叫びがえぐるえぐる。
見たくない事、見ないようにしてた事、直視させられる感じ。イヤだイヤだよ。
・・・こんな歌聴かせないで!!
一瞬だけ本気で腹がたちそうになったけど、曲の最後で突如挿入されたヤオさんのドラムで正気に戻る。

そして一転、愛にしみじみする『Born to love』が続く。

そしてそして胸を妖しくドコドコ震わせる『be yourself』!
・・・そう言えば歌の始まる直前に、アキラさんがみんなに言い聞かせるように“唱えた”んだ。

「自分自身に、戻りなさい」

って。

そうして『旅立ちの歌』とアンコールの『今日は死ぬのにもってこいの日だ』が始まるんだけど


でも、

その辺りの事はもうあんまり

覚えていない。


だって窓が締め切られてた音楽室は、
風が全然はいらなくて空気が動かなくて、だからちょっと酸欠状態ぽかったし、
あんまり暑くて暑くてサウナ風呂みたいで、だからちょっとボ〜ッとしちゃってたし。

太陽色のライトがくるくる躍るステージに引っ張られながら、
小っちゃい頃みたいに体全部を使って歌ったり踊ったり、はしゃいでたような気はする。

でも、ホントに何故だかその辺だけ、全然
覚えてないんだ。


そして『Happy birthday』!
アキラさんがみんなにまた言葉を“贈った”よ。
「君達の誕生日を祝いましょう」
って!

そう
だからハッピーバースデイ!!生まれて、おめでとう!!生まれ変わって、おめでとう!!!
ハッピーバースデイ!ハッピーバースデイ!
私におめでとう!お客さんみんなにおめでとう!そしてonsensにおめでとう!!

みんなみんなが、歌うよ!アキラさんが子供のようにウキウキとはしゃぎながら歌うよ!
タケちゃんも感極まった様子でぐしぐし泣きながら歌うよ!
リュウさんも優しく小さい微笑みを浮かべながら歌うよ!
ヤオさんもリエちゃんもお客さんもみんな歌うよ!ハッピーバースデイ!
ああ、ハッピーハッピーバースデイ!!
ホントにホントにホントに
おめでとう!!!!
ハッピーハッピーハッピーバースデイ!!ハッピ―ハッピ―ハッピー!!バースデイ!!
わーいわーいわーい!!


そんな大大大大大大合唱と大大大大大大拍手の中、ライブは大終了。
興奮も覚めやらぬサイン会でアキラさんに
「メールした者です!頑張ってココまで来ました!」って伝えると、
アキラさんは沢山のコトバは言わずにただ「お〜よく来たね〜ありがとう〜」ってハグしてくれて、
私はもうソレだけで来た甲斐あったなぁ。なんて泣きそうになりながら。


そして、そしてね、単なるお客さんで来た私なのに、
その夜はスタッフさんの家で隣の人とほっぺがくっつく位ぎゅうぎゅう詰めの状態で雑魚寝させてもらって、
翌日は川も森もあって、すれ違うと「こんにちは」って声をかけてくれるようなステキな人がいっぱいいて、
犬と子供が泥だらけで走り回ってたアイヌモシリ会場に行く車にも乗せてもらって。
しかも初対面の私にもスタッフのみんなは前から知り合いだったように沢山沢山笑いかけてくれて、
ソレが本当に嬉しくて私も沢山沢山笑って。

ソレに、ソレにね、私は残念ながらアイヌモシリライブを見ずに帰らなきゃいけなかったんだけど、
テント村でね、リュウさんとリエちゃんとスタッフの人達が、しとしと雨音を伴奏に、
お鍋や食器を楽器に見たてた、とってもとってもささやかな音楽会を催したんだ。誰かが歌も歌ったんだよ。
雨は冷たかったけど、そのオーケストラは胸がじんわりするような温かさで。
ソレが聴けたから、ソレが本当に本当にステキだったから、「もう帰ろう」って
素直な気持ちで会場を後に出来たんだ。

こんなに沢山のキラキラした事が溢れてた、
最高に忘れたくない夏って今までの人生の中で、あったかなぁ。なんて考えながら。



東京に戻って、アキコさんと「ライブ凄かったね!」なんて夜お茶していると、
突然いつものネガティブな感情が吹き出す。
「そう言えば私“生まれ変わりたい!”とか言ってたけど、わざわざ北海道行った割には
何か変われたとか別にない気がする・・・」

アキコさんは焦りながら言う「でもアナタは北海道まで行けたじゃない? 頑張ったじゃない?
ソレにライブは、旅は、とってもとっても楽しかったんでしょ?
じゃあ、もうソレで十分なんじゃない?」

うん、うん・・・そう私、北海道まで行ったんだ。1人で電車乗り継いで、1人で知らない土地に行ったんだ。
もちろん怖かったよ。不安だったよ。でも頑張ったんだ。ONSENSに逢う為に、頑張れたんだ。
その頑張りようは今までの事を思えば『自分、意外とやるじゃん』って、ちょっとビックリする位の事なんだ。

ソレにライブは本当に本当に楽しかったし、旅の間にはステキな人に沢山出会えたし、ステキな事が沢山あった。
だからそういう全てに出会う機会をくれたONSENSに、今はただ『ありがとう』って、思うよ。
新しい自分と、楽しいライブと、素晴らしい旅。いっぱいいっぱい、ありがとうって・・・。
うん・・・そう考えると確かに生まれ変わるとか、そんな事はどうでもイイ事なのかも知れないね・・・。

そう伝えるとアキコさんはにっこり笑って
「前より少しだけ何かに誰かにありがとうって思えたり、前より少しだけ自分の事好きになれたら、
ひょっとしてソレがONSENSの言う・・・ “生まれ変わる”って事なのかも知れないね?」
なんて言いながら、テーブルの向こう側から小声で『Happy birthday』を歌ってくれて、
その優しい優しい歌声があんまりあんまり嬉しくて、私はまた泣きそうになる。

窓の外にはサーモンピンクと薄いブルーの空が美しいグラデーションを重ねる。
丁度運ばれてきた2杯目のジンジャエールも、炭酸をパチパチパチパチパチパチパチパチ鳴らして一緒に、
『おめでとう』って歌ってくれました。



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