チリ「チリ:2 イースター島のモアイで死にそうになる」


飛行機の窓。
波のない穏やかな日の海のよに、真っ平らにみちみちと隙間なく埋まる雲達が
水平線まで続く。
地面からモグラが顔を出すよに、その雲々から沢山のブルーマウンテンが
ボコボコ頂きをのぞかせる。

そして以前に、昇ったばかりの太陽が湖に光の橋をかけてたのを見たけど、
同じように沈む太陽によって平たい雲にも黄金色の光の橋がかかる。

時間が経てば白い雲の下に毒々しくも鮮やかに染まる赤い空が透ける。
夕焼けが広がっているのだ。

あんまり壮絶な風景に、ああ今から「違うトコロ」に行くのだなぁ。と知る。


1日目(水)快晴
夕方着。空港に降り立っただけで感じる圧倒的な空気感!ぬおお・・・何じゃココ!
鬼気迫るおばちゃんの強引な客引きに連れられて安宿へ。
フラダンス系南国空気の緩さに浮かれて小さな月の小道を鼻歌。


2日目(木)快晴
街を散策。スーパーと市場とネットカフェをチェック。土産物屋もひやかす。
孤島なので物価がチリ本土の2〜3倍と高くて、相当ビビる。
この島はチリ本土から見れば外国扱いらしく、出稼ぎに来る人もいるらしい。

火山観光。火口には水がはって湖みたくなってて、葦(あし)が沢山生えてる。
その葦が水面に鳥のカタチを描いてるようにも見える。

海沿いの洞窟観光。
波を避けて岩場を飛びながら、絵が描かれてるトコまで行く。
イースター島伝来のオロンゴ鳥人の絵が天井部分に描かれてる。
鳥?人?不思議な絵だなぁ。何千年レベルの、すげー昔に描かれたんだろうなぁ。
つかこんな貴重な絵がこんな潮全開のトコにあってイイの?痛むのに保護とかしないの?

サンセットはモアイが数体並ぶタハイにて。
黄金のアメちゃんみたいな太陽。凄すぎて呆然。


3日目(金)快晴
波の音が聞こえる海近くの安宿に移る。
ちなみにこの宿、台所、居間、居間のCDコンポ、と時計が3つあるけど、
指してる時刻が全部違って、正しい時刻がわからない。

でもラパヌイ人(イースター島民)は明日また会おうって時、
午前か午後かで約束するらしいので、細かい時間なんて多分気にしてないのだ。
つーか午前か午後か。ってソレ、アバウト過ぎるよ!
適当全開のブラジル人だって17時に約束したら18時には来るよ!

でもココはそーゆートコなんだ。そーゆーモノなんだ。国、つーか場所によって、
私が生まれ育った日本とは、ホントに色々なコトが異なるのだ。つうコトを
今更ながらに再度、痛感。


5体のモアイと15体ものモアイが横並びするトンガリキを観光。
帽子さん。おチビさん。いかついさん。背高さん。色んなモアイがいっぱい。
日本のイメージで、でけーモアイが1体どぉ〜ん!とあるのかと思ってたら、
島中に数え切れない程のモアイがあるらしい。
明日からのモアイな日々が楽しみ過ぎて、夜はムダに室内をウロウロしてみる。


4日目(土)雨
朝から虹を見ちゃってホクホク。
公民館ではママさんフラダンス教室が開催中。みんなロング布を腰に巻きつけフリフリ。
入口付近から眺めてると、参加するように促される。
一応ダイブ必死で頑張るも、オバちゃん達の腰のフリに全くついてゆけず。
つーか何なんだよその腰つき!ブブブブブブって音がしそうな感じじゃん!
いや、すげーなアンタら!


夜はポリネシアンダンスショー。「アロハ〜オエ〜♪」的なハワイアンっぽいダンス。
腰ミノ女子のカワイらしさに夢中。腰ミノ男子の激しさも雄雄しい。

でも別にコレ、イースター島伝来のダンスじゃなくて、あくまで観光用ダンスらしい。
でもカワイイから良し!

しかも小さな村なので踊り子は普通に村民。
お前、一昨日まで泊まっていた宿の娘じゃねえか!という踊り子までいる。

ラストダンスではまんまとステージに引っ張り上げられる。
ひらひら踊らせてもらってポリネシアン満喫。


5日目(日)快晴
朝から教会のミサに参加。
昔イギリスで見たクリスマスミサのように厳かなモノかと思えば、
南の国の日曜ミサだし、開放感のある大変うららかなミサ。

ハッピームードな賛美歌が教会にこだまする。
いつまでも聞いていたいような、花が咲くような歌声。
大変幸福なキモチに満たされる。少しのお布施。
教会を出るといつもより少し世界が眩しかった。


午後は漁師の家族と浜辺へドライブ&ピクニック。

海スグの、たまたま車が止まった場所は卵型の石付近。
この石のせいなのか、ソレともこの場所自体のせいなのか、
石の近くに方位磁石を置くと、針がグルグル廻り始めてしまうらしい。
磁場が完全に狂って、南北を指さないらしい。
実際、石に手を近づけると、錯角ではなくビリビリするような感じが。ひえー。

みんなで網とか使って魚を獲る。普通のこげ茶色っぽい魚に混じって、
鮮やかなサファイヤ色の魚とか獲れてビックリする。
こ、こんな色の魚も喰えるのかよ!

魚が足りないようで別のポイントへ移動。
途中で木になってた大量のバナナをもぎる。

みんなが漁をしている間、私は焚き火をおこす為の枯枝拾い。
また軽石みたく沢山穴が空いた海岩を積み重ねてかまどを作る。
奥さんが魚を調理をする。

そしてついに完成!
プラスチックのお椀の中には、超美味しそうな匂いを漂わせる煮魚スープ!
またお皿に見たてたモサモサの海草類の上には、トマトやタマネギで
飾り付けられた刺身盛り!

デカイ海岩をテーブルに見たててズラリと並べる。
正にサバイバル料理。アウトドア万歳!食いしん坊万歳!

つか何かすっげー豪華じゃん!!こんなすっげーの食べちゃってイイの?
ていうかそう、基本的にこの島はモノがない。
家庭雑貨だけじゃなく、村民が食べる食料でさえ空輸に頼ってる。さっきもぎった
バナナですら、通りすがりの貧しそうなオバちゃんに6割方あげてしまった。

正直、もったいねー。バナナあげちゃうの?って思ったけど、ソレは村民同士の
シェア精神なの?モノがホントに少ない島だからみんなで分け合わなきゃなの?

じゃあ私は超貴重な食料である魚や野菜を頂くんだ。有難いなぁ。
そう言えば私はパンを持っておりまして。と焦って今更ながらにバックから取り出す。
さすがにタダでご馳走になる訳にはいかないですし。

感謝を唱えつつ、手づかみで喰う。
大変もったいなくて、ゆっくりゆっくり噛む。
指も舐めつつ舐めつつ、丁寧に喰う。
魚、うめー。多分、今までの人生のゴハンの中で1番美味いお食事。
もちろんこんな状況での食事なので、でも「イースター島」で「漁師さん」と「ゴハン」と言う
「思い出テイスト」「感動テイスト」もダイブ含まれてますが。

帰りの車では夫婦喧嘩に巻き込まれたり、ヨメはんのグチを延々聞かされたりする。
車が見えなくなるまで手を振って別れる。


6日目(月) 曇り
洞窟探検。入口は狭いんだけど中はめちゃ広い。
足元をライトで照らしてどんどん奥に進んでゆく。奥の細道。中腰のまま進む進む。
この洞窟はドコまで続いているのか。果てはあるのか。探検だ!探検だね!
ゴンゴン進むも、さすがに戻れなくなる恐怖に襲われ、大きな光溢れる穴から地上へ戻る。
入った場所からダイブ離れた場所に出たりして大変驚く。

大仕事にふうと溜息をついていると、一緒にいたチリ人がグアバの実をもぎってくれる。
かぶりつく。

通り道に馬の大群!こっち見てる!何故馬がみんなこっちを見てるのか?
カメラを向けるとイヤなカオされる。そ、そうだよね。勝手に撮られたくないよね。
ビックリするよね。馬だって人間と同じだよね。失礼しました。
て、ていうか馬と会話すんなよ!私!

午後は島内で唯一海を向いて並んで立つモアイ観光。(他のモアイは全部島内を向いてるのだ)

夕方はそのまま1本だけ立つモアイポイントへ。モアイの背中に太陽が落ちてゆく。
急いでいつものサンセットポイントのタハイへ。
サーモンピンク色だった雲の向こう側は、日が沈みきると黄色に変わった。


7日目(火)雨のち曇り
雨の合間に虹。スグ消えてしまって残念。
しかし良く虹が現れる土地だ。

前にフラダンス教室をやってた公民館を通りかかると、今日はヤング女子が集団で
何かやってる。ヤング男子が何人か覗いてる。女子が集まってるから気になるんだね。
男子はモノとか投げて気をひこうとしたり、鬼ゴッコのフリしてわざと中に突入する。
男子は世界中ドコへ行ってもバカでカワイイなぁ。

そして洞窟の壁画観光。

毎日恒例タハイでサンセット。相変わらず凄過ぎて逆にCGっぽい。


8日目(水)快晴
1日1モアイ。作成途中のモアイが大量に放置された岩切場ラノララクへ。
遠めに見ると、モアイを「岩から切り出してる」つーよりも、「地面からニョキニョキ
生えている」みたいだし、また「地中から丁度這い出してきてる」みたいでもある。
すげーキョーレツ!何だコレ!

うつむいてるモアイ、何か訴えたたげなモアイ、堂々としてるモアイ、
女座りしてるモアイ、寄り添ってるモアイ、顔が真ん中から上半分しかないモアイ、
クチをとがらせてるモアイ、天を仰ぐモアイ、もう、もう、モアイでお腹いっぱい!

コレ、多分作ってる人の精神状態とかが出てたりするんじゃねーの?わかんねーけど!

更に奥へ進むと火山口が!水がはって黄色の植物が生えてて超キレイ!
そしてそしてその奥には更に大量のモアイが!おわ〜!
穏やかに微笑んでいるようなモアイをヒトツ見つけてウットリ。

少し小高い丘で大の字になってモアイに囲まれ昼寝。


9日目(木)雨
終日雨だったので、大量の絵葉書を描く。


10日目(金)雨
モアイ博物館見学。

元々モアイは、領地を守る為に各部族が守り神として作成したらしい。
そういえば小さい頃からモアイって、何となく身近なモノな錯覚をしてたけど、
冷静に考えて、全然普通じゃ無い。

カタチとか存在とか製造法とか成り立ちとか、意味不明過ぎる。
つーか良く考えたらモアイってイースター島にしかない。すげー変。すげー不思議。


今日は親しくなった人の家に宿泊。
イースター島伝来の本当のダンスを少し踊ってもらう。
平和系のゆったりダンスではなく、むしろ戦いのような勇ましいダンス!
す、すげー!カッコイイー!!


11日目(土)雨
家の子供と散歩。ヒヨコの声真似をし合う。ピヨピヨ。
その辺に生えてるサトウキビをくれる。普通に硬いので超真剣にかじる。
ガリガリやり過ぎて、うっかり前歯の差し歯が取れる。
子供、マジビックリ顔。つーか私もマジでビックリ。2人してちょっと固まる。

恐怖!スキっ歯で「愛がね、全てなんだよ」とか熱弁を振るう女!
一ヵ月後にブラジルはサンパウロの日系歯医者さんで治すまでずっとそのまま。


12日目(日)快晴
再度トンガリキ。近いので。

島民のガイドさんと話す。モアイは、倒したままだと他の国から
「何で直さないのか。おこさないのか」って言われるし、おこしたらおこしたで
今度は「何で倒したままにしないのか」って言われるらしい。
む、難しいんだのう。世界遺産。単なる観光客の私は何も言えないっす。

またこの島は観光化が急激に進んで、ついでに文明も急激に入り込んできて、
おそらく正に今が過渡期。タクシーやバイクも走るけど、未だ馬も日常的な交通手段。
片手に手綱、片手に木を切る為のチェーンソーな人も。でもバランスは多分取れてる。
昔のままでいて欲しいけど、ソレを望むのは酷だ。誰だって生活は便利な方がイイ。

ソレに島を変えたのも観光客。単なる観光客の私はホント何も言えないっすよ。
だからせめて、沢山のステキなモノを見せてくれてありがとうって感謝するっすよ。
だから、そう、うん。ありがとう。ありがとね。


13日目(月)快晴
手作りのモアイの小さな置物を買って、明日は機械の鳥に乗り込む。
まるで魔法にかかってたみたいに、完全に我を忘れてハシャいでた日々を
繰り返し繰り返し、思い出しながら。

イースター島は多分きっと、ホントに魔法の国なんだ。
だって全てが全てがあまりにも非現実的な程にそう、ステキだったん、だもの。

でも、昨々の夜、出発は明後日ってなって、ソレで、『あんな事に』なっちゃうなんて、想像も、
つかなかったのだけど。




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