愛知ライブレポ


2DAYS二日目の今日の会場は名古屋。
市内のオサレスポットでもド真ん中周辺のカフェバーが会場。

みんなにとっては普通に今日だけのライブだけど、私は昨日から引き続き2日目。
アキラさんのライブは連続であればあるほど、アキラさん自身の声も伸びるし、
客側でいても連続であればあるほど、自身の潜在意識への影響も深くなる。

彼は「くだらなくて、どうしようもなくて、みっともない、そのままのキミは既に美しい」
なんてコトを歌う。
「ダメなままのキミでイイんだ」そんなコト言う人、今まで誰もいなかった。
だからソレだけで嬉しかった。存在そのものを肯定された気がした。許された気すらした。

また彼のライブは「見ないようにしてる自分の過去の傷に立ち向かい、乗り越えるコトで、
明日を生きてくチカラを得る」時間になる。
ソレはまるでシャーマンのセッションを受けた時のような効果をもたらすんだ。
彼のライブを通じて、本来の自分を取り戻して歩き出す人を今まで本当にたくさん見た。
だからこそこの人の生歌は、相当スケジュールをムリしてでも、聴く価値があると思う。



「Unconditional love(無条件の愛)」から始まる一曲目。
私はステージ近くのソファにゆっくり体を預ける。
余分な情報をシャットアウトする為に、音に集中する為に、目は最初から閉じたまま。

「だいじょうぶマイフレンド」「Frajile」と続くウチに気がつけば、
体が少しづつ斜めに倒れていた。
真っ直ぐに戻そうとするんだけど、でもまあイイか。とも思えて、そのままでいる。

「青空の向こう」
何だかちょっとだけ、ぼんやりする。意識が遠のきそう。音がもうダイブ遠い。
眠いのかな?いやまさかライブ中だし。昨日ちゃんと寝たし。
意識がちょっと軽くどっかイっちゃってるみたい。トランス状態?お酒もドラッグも
摂取してないのに。何じゃこりゃ。何か変。お客さんみんなこんな風になってるのかなぁ。
でも周りを見渡す余裕はないなぁ。

ていうかコレ全部、そういう風になるように、アキラさんが音楽で何かやってんのかなぁ。
じゃあアキラさんは一体、何をやろうとしてるんだろう?
つ−かでもアキラさん、意識的に何かやってる感じしないよなぁ。
じゃあアキラさんはアキラさんを超える何かに、一体何をやらされているんだろう?


「Be yourself」
体の内部が変に揺れてる気もする。ぜんぶがグラグラする。
ホントのコト言うと、昨日の岡崎ライブ辺りから平衡感覚がちょっとおかしかった。

「ぼくの居場所」
意思に反してゆらり瞼があがる。ライブ会場ぜんぶがぎゅうんと視界に飛び込んでくる。
過剰な情報量。薄暗闇の照明。バーカウンター。ソファ。お客さん。アキラさん。友達。

そんなに人がたくさんいる訳じゃないけど、密封された空間。凝縮された空気。
急に息が苦しくなる。人の気配が怖い。知らない人の存在感。人のいない所に行きたい。
他者。自分。他者。他者。他者。他者!アタマがおかしくなりそう!!!!

苦しい。脳内が平素の自分じゃない意識に支配される。
気が狂いそう。気が狂う。気が。気狂。気がくるう。発狂。くるう。くるう。
気が狂う。気がくるう。きがくるう。きが狂う。くるうくるくるう。気が狂いそう。
気が狂う。気が狂う。気が狂う。気が狂う。気が狂う。気が狂う。気が狂う。気が狂う。

でも実はこの意識、普段でも時々入り込んでる。苦手な満員電車の中とか。
だってソレに集中すれば精神的に苦しいは苦しいけど、その瞬間は現実と向き合う
リアルな苦しみからは逃げれるからね。問題は何ヒトツ解決してないけどね。

とにかく、ただ今日はいつもよりソレが長いだけ。深いだけ。



不意に、曲音が途絶える。私のおかしな思考も途切れる。
アキラさんが少しの休憩を唱えた。前半後半制?でも助かった。とりあえずいったん
外に出よう。大きな音をたててガラス戸を閉める。屋外へ流れ出る。

見知った街を夜散歩。
いつもある程度時間が経てば、本来の正気な精神状態になるのに、今日は全然戻れない。
自分を冷却する為にただ足を動かす。何人かの人間とスレ違う。少し怖い。逆にじいっと
見てしまう。目をつむれば見えない。瞼を閉じたまま歩く。おしっこがしたい。名古屋の
超都心部だけど、100円パーキングのはじっこで野ション。野良犬じゃないんだから。
夜風が寒い。もう一枚着てこれば良かった。掌を見る。ぼわんと気を感じる。コレは気功。



私は、そう私は、数年前から気功を習い始めて、何だか全身の皮膚感覚(?)が鋭く
なって、そうしたら人ごみが苦手になってしまって、電車も乗れなくなってしまった。
何故だか人ともうまくやれなくなってしまった。軽い神経症のようになってしまった。
とっても「生きづらい」日々になってしまった。

以前の私は、イベント製作会社のディレクターとして集団の中で人を生かしていた。
また連日朝方までクラブで遊んだりして、いつでも人間関係を器用に泳いでいた。
どっちか。つーと生きるって簡単だなぁくらいに、ブイブイいわせて日々を過ごしてた。

でもソレが急にぜんぶひっくりかえってしまった。
今は集団で長期でやる仕事はもう出来ないし、第一人がたくさんいるトコロに行くのが
普通に苦痛。出来ればずっと部屋で一人でいたいくらい。
生きてるだけですげー困難。

でもねえ、だからこそ、
「良かったなぁ」って、
思うんだよ?


だって以前は不器用な人間の気持ちなんて、考えたコトもなかった。
人とうまくやれない人の大変さなんて、わかろうともしなかった。
そういうんが実感として理解出来た今、多分前よりちょっとくらいはやさしくなれた。

また集団の中で働けないからこそ、家で一人で出来る仕事を探して、どうにか頑張る
方向にもなってきた。
その仕事の方が今までより、断然自分の為にも人の為にもなる仕事なんだ。

「生きづらく」なれたからこそ、私はより「自分らしく」生きれるようになった。
「生きづらく」なって確かにたくさんの「何か」を失った。でも得た「何か」の方が
圧倒的に大きいんだ。

だから今は「生きづらさ」に感謝すら、感じるんだよ?



見上げた空には円弧に近い月。あさってが満月。
そういや夕方には、月みたく黄色くぼわり浮かぶ太陽を見た。ソレはこの世のモノとは
思えない美しさだった。まるで何かの予兆すら、感じさせるような。

再度、夜風が足元を吹きぬけてゆく。私は小さなくしゃみをヒトツ。アタマもダイブ
冷静に戻ってきた。ライブ会場へいったん戻ろう。



ドレだけ長い間、街を彷徨っていたんだろう。後半のライブは当然だけど始まっていた。
中には入らず会場前の道路で、こぼれる音をひろって踊る。
出入りするお客さんはたくさんいたけど、私はそのまま外にいた。
中でじっくり聴きたかったけど、また発狂しないとは限らないのが怖かった。
ちょっとサミシイけど、仕方なかった。外で、十分だって思った。

ラスト辺りにさしかかって、急に名前を呼ばれ会場内に入るよう促される。
?何?昨日みたく神楽鈴で参加させてもらえるのかな?

ステージ近くの椅子に座るよう案内される。
アキラさんに「大丈夫?気分悪い?」って聞かれる。
「や、ブッ飛んじゃって」反射で答える。
場内からやさしい笑い声が聞こえる。

どうも神楽鈴で呼ばれたんじゃない様子。
じゃあ何でわざわざ?なんて軽く混乱していると

「あさって誕生日のイワセユウコにハッピーバースデイを!」

アキラさんがすげー笑顔で言う。
持ち曲「HAPPY BIRTDAY」が歌われる。


あーあーあーあーあーあーあー。
そう、そうなんです。私あさってで三十路になるんです。もうおっさんなんです。
でもこんなトコロでこんな風にお祝いしてもらえるなんて!!!!!!

涙と鼻水がいっぺんに出る。顔がわかりやすくぐしゃぐしゃになる。
今多分、人に見られたら相当マズい顔してる。でもイイや。だってもう最高に嬉しい!

アキラさんに「コーラスお願い」って言われるからサビの部分を重ねる。
「HAPPY BIRTDAY。HAPPY BIRTDAY。
HAPPY BIRTDAY。HAPPY BIRTDAY。
この瞬間にキミは生まれ変わるんだ
HAPPY BIRTDAY。HAPPY BIRTDAY。
HAPPY BIRTDAY。HAPPY BIRTDAY。
生まれたての君に乾杯!」

歌いながら、会場に花がふりますように、光がふり注がれますようにって祈る。
みんなが嬉しくありますように。喜びでありますように。どうか。どうか。
そしてみんなの生まれ変わりを祝おう!
みんなみんな生まれ変わって本当に本当に、おめでとう!!!!!!
おめでとうおめでとうおめでとう。本当におめでとうだよ〜!!!!!!!


何だかもうさっぱり訳がわからないけど、とにかくライブは大団円で
大拍手につぐ大拍手の中、終了!!
神がかり的な幸福量に軽く放心状態でいると、ろうそくに炎がともったケーキが出てくる。
どうも私の誕生日ケーキだと言う!!!うえわあ〜!(←許容量を超えました)
涙と鼻水は更に垂れ流される!!!!

でも既に体が言うコトを聞かないから、(連れられた宇宙人のように)エスコートされ
ケーキまで歩み寄る。
ろうそくを一気に吹き消すも、また完全に我を失っているので力強く吹くコトが出来ない。
炎は全然消えない。二度三度吹き消す。
一度消えたと思いきや、再度火が戻る。

最後の最後となる炎を吹き消す刹那、急に言葉があふれ出した。
「みんなに花がふりますように、光に包まれますように、祈って吹き消します」
息を吹きかける度に、心の中で唱えてた想い。わざわざ人に宣言するようなモノじゃない。
でも何故か勝手にクチが動いてた。

おなかにチカラをいれて、最後の息。最後の祈り。
どうか喜びを。どうか嬉しさを。

ろうそくにクチを近づける。
まるで、世界にキスするみたいに。
ふうー。
私の想いをどこかに届けるように、ろうそくの火は、すうと静かに消えたんだ。

「おめでとー!」拍手と共に、たくさんのお祝いの声があがる。
「みんなにおめでとうだよ」心のソコからの言葉が出てくる。

「誕生日おめでとー!」笑顔と共に、繰り返される言葉。
「みんなの誕生日だよ」やっぱり心のソコからの言葉が出てくる。



ああ、ああ、ひょっとしてコレが「自分をなくす」ってコトなのかも知れない。
だって今、私完全に「自分に対する祝福を喜ぶ」よりも「みんなに祝福をって願ってた」。
うまく言えないけど、「みんなに祝福をしよう!」って「思考で考える前に」、
もう「お祝いしてた」。

ああコレが本当の意味での「自分をなくす」ってコトか。
ああコレが本当の意味での「人の為」ってヤツなのか。
ああコレが本当の意味での「愛」ってヤツなのかなあ!!

とにかくコレで「自分をなくす」を一度完全に経験した。
あとはコレを自分が創作する時に応用するだけだ。
コレからは、もっときっと伝えたいコトをきちんと伝えれるモノを作れるだろう!
わーいわーい!嬉しいなぁ!!!

だから、ねえ、アキラさん、ありがとう。お客さんにも、ありがとう。
みんなみんなに、ありがとう。ありがとう。ありがとう。
だからそう今、私の目の前にいる「アナタ」にも、
ありがとうね?



周りを見渡せば名古屋スタッフが笑顔を向けてくれる。
一年半前のアキラさんの名古屋ライブで知り合ったヤツと、またライブは関係なくも、
やっぱりアキラさんがらみで知り合ったヤツら。

こいつらはどうでもイイ理由をつけては、いつも集まって飲んでやがる。
誰かが誕生日だと言えば、しつこく毎回お祝いの会を開いてやがる。必ずケーキ準備の上。
しかも私がしばらくこの街を離れてる内に、いつの間にかイベント集団になってやがって、
つい一週間前とかにもハンパなくデカい音楽パーティーとかやってたみたいで。
自分達で楽しみを作り出せる行動力と、またいつだって他者を思いやるやさしさを
合わせもつ、底抜けに普通にバカだけどホントすげーイイヤツラなんだ。


タッキーはどんな時も驚く程冷静に行動するから、いつでも安心して場を任せられらる。
コズモちゃんは、クールビューティーな働き者っぷりに磨きがかかってた。
リナちんは自分なりに前に進もうと、でもどうしたら良いのかわからずあがいてた。
しのちゃんは不器用丸出しながらも、ギターでハッピーバースデイを弾いてくれた。
めぐちんは少しだけオトナになってた。そっと、またどっしりと隣にいてくれた。
サクライくんは喜びのあまり変な動きをしてた。彼も大きく生まれ変わったんだろう。
ケンケンは無職軍団に、エリートサラリーマンなんて辞めちまえと応援されていた。
ミホはまだ一年旅から帰ってきてなくて、新しい門出のエリちんと同様、残念ながら
今日は不参加。でも神戸からケンゴが引っ越してきたし、名古屋はまた楽しくなりそう!
東京からナホちん、九州から京都に越したモト、そして当然の出席率地元みゆきちんも
ありがとう!!!!

みんな変わらず、ただソコにいてくれた。
ぶつかり合って、支え合える仲間は、前と変わらずソコにいてくれた。


五ヶ月前、私は田舎暮らし(つっても新宿からバスで一時間半。運賃は1500円)に
魅かれて、名古屋を離れ山梨に住まいを移した。
でも普通にうまく馴染めず、正に「昨日」この地元名古屋に帰ってきた。
気分的には「都落ち(田舎落ち?)」って感じで。

実はダイブ参ってた。

でもヘコんでるヒマはないし。明日からは、以前から手がけてる旅本執筆に集中する為に
実家に篭ろうと思ってる。
そしてソレが書きあがったらきっと、今度は東京で暮らすコトになると思うんだ。
今日新しく手にいれた「自分をなくす」って言う武器を片手に、
もう一度外の世界で自分の夢の為に、戦おうと、思うから。

でも
名古屋にはみんながいるから。いつでも帰って来れるから。
コレで、いつでも負けれる準備が出来たから。
だから、もう怖いモノは、ないから。
だから、だから。

だから...




会場から機材を搬出。移動の為に車輌に乗り込む。
私はライブの壮絶っぷりと、数十人もの人達にお祝いされたあまりのショックに
まだぜんぶがぐわんぐわんして思い通りに体が動かない。
うまくしゃべるコトも出来ない。

でも今日は、自分の体が崩壊したような感じすらする。
そんで今は、必死で再構成してるような感じすらする。

自分が死ぬかも知れないと言う予感は、精神的に一度死ぬって意味だったのかな?



走る車の窓から見える街路樹の桜。
突然、いつかどこかで見た青空に向かって手を伸ばす満開の桜がフラッシュバック。
少し甘酸っぱい薄ピンク色のような、風薫る新緑の黄緑色のような、そんな香りの記憶。

明日もきっと良い天気だろう。
明日もきっと良い風が吹くだろう。
明日はきっと私も良い顔で笑っているだろう。

だって。ねえ?もう、

春だもん。




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