高崎ライブレポ


傘が必要なじとじと雨降りな季節から始まった私のONSENS旅は、
いつしか、紅色や葡萄色の葉っぱの美しさを楽しむ季節まで
続いていたのです。


唐突に始まるのは、切なくて苦しくて
Tシャツの裾をぎゅーって握り締めさせられる「ぼくの居場所」!

続くのは、どこか遠くて暗い場所でケモノが空に吼えるような音を
ディジュリドゥが響かせるから『今から違う場所へ行くんだ』なんて思えて
おし黙って聞き入っちゃう「インラケチ」!

宇宙規模の愛にうっとりぐんにゃりするよ「Beautiful」!

命いっぱいに生まれた喜びを歌うよ!わーいわーい!
右!左!右左右左ピョンピョンジャンプ!「Hello my mam」!

頭痛がする気がして頭を両手で抱えちゃう。お腹も痛い気がしておさえちゃう。
吐きそう。吐きそうだよ。
でもそんなのも魔法の言葉が吹き飛ばしてくれるよ「痛いの痛いのとんでけ」!

目はつむっちゃうし、口はヘの字になっちゃうし、座り込んじゃう。
あんまり痛いから、でもあんまりにも優しいから少し、嬉しいよ「リストカッター」!

しかめっ面になるよ。でもポッケの中でくしゃくしゃになった紙屑もいつしか
するするとほどけてゆくよ「心がくしゃみをした朝」!

そしてヤオさんとリエちゃんのスーパーパーカッション!!!
聞いてるだけで、体がぐにゃぐにゃするよ。ぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃ。
頭もぐるぐるぐるぐる回しちゃうよ。ぐでんぐでんぐでん。
わー何か変な感じ!でも楽しーよー!!!キャー!!!

何だか自分の事言われてるみたいで、ちょっと情けないよ。泣き笑いだよ。
でももーいーや!歌っちゃえ!叫んじゃえ!!「だいじょうぶマイフレンド」!

そして「今日は死ぬのにもってこいの日だ」が始まるんだけど
歌が始まってすぐにアキラさんのボーカルの声が全く

聞こえなくなる。


あとから聞いたら音響機材の故障らしいんだけど、
曲の始まる直前にステージからPA席に続く音源コードに足をひっかけた私は
きっと今、私が大事なコードを引っこ抜いちゃったから、音が出なくなったんだ!!
なんて相変わらずの自分勝手な思い込みで、脳内でぐるぐると大会議が、
始まる。

そう今回私は、アキラさんの「スタッフやってみたら?」の一言で
高崎ライブのお手伝いをさせてもらう事になったんだ。

スタッフは前日から会場入りして、機材を搬入したりするんだけど
テキパキと動いている他のスタッフと比べて、私はどうも動きがトロいし、
要領も悪くて、何だか足手まといにしか思えない。
夜は夜で宴会があるだけど、前のライブで会った事がある人ばかりだから
気をつかう必要は全くなかったんだけど、だからこそ
ボロが出ないようにとか、自分を良く見せようとか、変な気負いをし過ぎて、
普段以上にまともに会話が出来ない。

スタッフやらせてはもらったけど、トロいわ、会話は出来ないわで、
自分のダメさ加減を思い知らされた感じで、
余計に自分の事、嫌いになりそうだった。

ソレでこのコード事件!

またみんなに迷惑かけたよ。
本当にスタッフなんてやらなきゃ良かった!
こんなヒドイ事やっちゃって・・・、
もう・・・しゅるしゅると消えてしまいたい。
ソレともこの場から逃げ出してしまいたい。
でも逃げ出すような勇気も私には到底
なくて。
そのままその場にただもう、ぼうっと立ちすくむしか、
出来なくて。

そんな状態で「旅立ちの歌」が始まるから、
応援されてる感じが嬉しくて大好きな歌なのに、いつもみたく喜べない。
呆然とつっ立って、もー知らない。どーにでもなれ・・・。
なんて投げやりにため息をついてゆっくりと目を、つむる。

と、

ああ、
ああ、ああ、そう、
その、
その、瞬間。

まぶたを半分閉じた世界の向こう側では、
ぱあっ。と照明の光がステージ上でひといきに大きく、

瞬い、た。


そう、そう言えばね、前のライブで逢った男の子がね、言ってたんだ。
「本を読んだり、色々と行動してみたりもするんだけど
中々自分が理想とする人間になれなくて。
完璧な人間には全然なれなくて。

みんなが出来る事が出来ないし、自分だけ違うような事やっちゃうし、
周りと上手く合わせられないし、ソレに平気で人を傷つける事言っちゃうし。
自分は本当に最低な人間だなぁ。って良く思うよ。

でもONSENSがさ、
『くだらなくて、みっともなくて、どうしようもない
そのままのキミでイイ』
って歌ってくれるんだよね。

まだ本当にその言葉の意味を納得し切ってる訳じゃないんだけどさ、
何て言うのかな、あー俺、このままでイイんだ〜。
って全肯定された感じって言うか、
認めてもらったって言うか、許してもらった?って感じがしてさ。

みんなが出来る事が出来ないけど、良く考えたら
みんなが出来る事が自分も出来なくちゃいけない。って事はないし、
自分だけ違う事やっちゃうけど、
ソレならソレで自分だけのやり方探せばイイし、
周りに合わせられないけど、合わせる必要なんて別にないし、
ソレ以前に、ペースが合う人と一緒にいればイイだけのハナシだしね。
人を傷つけちゃうのは、気をつけるしか、ないんだけど。

つーかさ、何つーの?『ダメな、そのままのお前でイイんだ』なんて、
そんな風に言ってくれる人、
今まで
うん。

いなかったしね。

もう、そーゆー事言ってくれるだけで嬉しいって、言うかさ」


・・・私は、私はトロいし、ネガティブだし、そんな自分が大嫌い。
でもホントはトロいのも、ネガティブなのも、なおしたい。
人見知りも、引っ込みじあんなのも、逃避癖があるのも、なおしたい。
みんなに“凄い”って言われるような人になれなくてもイイから、せめて、
ダメ人間じゃない自分に、なりたい。

ならなきゃいけないって思ってた。
ならなきゃダメだって思ってた。

だけど、ONSENSは『そのままのキミは既に、美しい』。
って、歌ってくれる。

そのまんまの私が、既に美しい?

トロくて、ネガティブで、人類の中でもいらない側にいる本格的にダメ人間な、
そんな私が美しい?


そう言えばONSENSのライブで友達になったアキコさんが言ってくれたんだ。
「アナタはさりげなく気を遣ってくれる人だし、ソレにホントのんびり屋さん。
一緒にいると何だか安心出来るんだよね〜」って。

安心?

私と一緒にいると???????????????????


ぐらぐらする私の感情を揺さぶるように続く「Be yourself」!
“自分を救う為の戦争がはじまる”?
私自身が私を救う?
私自身が私自身に何をするの?
私が私に、一体何をするの???????????


気がつけば、マイクはなおったようで歌声が再度、脳内にこだましていた。
照明はぐるりるりと不規則な回転をしながらステージ上を明るく暗く照らす。
光の量が一定じゃないから、あんまり不安定だから、
余計に頭の中も胸の中もぐちゃぐちゃになっちゃって、
どうして良いかわからなくなって気がついたらもう
ぶわーって、泣いてたよ。

そう。いっぱいいっぱい泣いちゃったんだ。
いっぱいいっぱい泣いちゃったんだ。

でも、でもね?
“一人じゃ何も出来ないかい?”なんてその歌詞すらもホントは
“キミだって出来るよ!”なんて意味なんだって知ってるから、
その涙は

嬉し涙なんだよ?



そしてそして「Born to love」!
鼻の穴がぷくっとふくらむ。

“愛”って、ああ“愛”って・・・何てリアル感の無い言葉!
このご時世にそんな言葉、ギャグでしか誰も言わないよ!
でも、でもそんな言葉を、そんな歌を、ONSENSは真顔で、
むしろダイブ必死な顔して、高らかに歌ってくれるよ。

そう。ONSESは優しい歌を歌ってくれる。
ONSENSで知り合った友達も、優しい言葉をかけてくれる。
だから私は、ONSENSで優しさを
知ったんだ。


そうなんだ。トロくて、ネガティブで、人見知りで、引っ込みじあんで、
逃避癖がある、本当にいらない側の人間の、私。
でもそんな私に『くだらなくて、みっともなくて、どうしようもない
そのままのキミでイイ。ダメなままのキミでイイ』ってONSENSは、
歌ってくれるんだ。

ソレに・・・そう、アキコさんが、アキコさんが
私はのんびり屋さんで、さりげなく人に気が遣えて、
一緒にいると安心出来る人間であるらしい事を、
教えてくれたんだ。

そしてONSENSのライブの為に、知らない土地を一人で旅出来る、
意外と行動力がある私って事も、ライブを通じて自分自身で
気がついたんだよ。

そう。だから例えば、例えばだけど・・・
トロいからこそ、人に飲まれずにマイペースな私でいられるし、
ネガティブだからこそ、後悔も超するけど反省もちゃんとするし、
人見知りだからこそ、親しくなった友達はとっても大事にするし、
引っ込みじあんだからこそ、誰かを無理に押しのけたりはしないし・・・。

そんな風に考えればひょっとして私も、ダメなばっかりでも、ないかも。
て言うかむしろ、案外、割と、結構、イイ奴側な奴なのかもよ?
なんてね?

じゃあもー私は私だし、何十年もこーゆー風にきちゃったし、
今更変わらないかもだろうし、でもまあ変わるかもだけど、
ひょっとして私の受け取り方次第で全部の現実はひっくり返るかもだけど、
まあとりあえず当分の間は、そのまんまの自分で、ダメなまんまの私で、
やってゆこう。

そう、私はこの私のままで、
生きてく。
生きてくよ。

そう。

生きてくんだ。


だから、そーゆー事を教えてくれたONSENSに、ありがとう。
ステキな友達と巡り合わせてくれたONSENSに、ありがとう。
意外とステキな自分を見せてくれたONSENSに、ありがとう。
そしてそして、そーゆー風に思えた“自分自身”に、

ありがとう。


嬉しくて嬉しくて、
私の中のピンク色のちっこいハートさんがペコってしたよ。


そしてそして「Happy birthday」!!
ハッピーバースデイ!生まれておめでとう生まれ変わっておめでとう!
ってあれ?ひょっとして・・・
“そのまんまの私を受け入れた、ダメな私を受け入れた”
そう正に“今日”が私にとって、ONSENSが言う
“本当の意味でのハッピーバースデイ”?
えっ?あれ?そうなの?って、キャー!!!!!!
ああ!私に、私に、おめでとうおめでとう!!
その事に気づいた私におめでとう!
生まれ変わって、そう!おめでとう!
私に、私に、おめでとう〜!!!!!!!!!!!!!!!!

自分史上最大の祝福があんまり嬉しくて、
そのキモチを誰かと分かち合いたくて、
両側の誰かの手を“ぎゅー”ってしたいキモチでパンパンになったよ。
でも知らない人に突然そんな事されたら驚くだろう。って思って、
代わりにその手を張るように高く伸ばして、爪先立ちにもなって、
胸がぐっと締め付けられる位の想いで、顔がひん曲がる位の勢いで、
誰にでもなく、ただお空に向かって声を出さずに叫んだよ。
“おめでとー!!”
って!


そして続く「Reincanetion」で着地、する。
ソコは広大で平坦な、場所。
私はその場所を生きてゆかなきゃいけなくて。

でも私はもうそのまんまの私を受け入れたから。
ダメな私を受け入れたから。
きっと・・・前より強い私になれたと思うから。

だから、私はただの私で生きてゆく。
多分、もちろん時々はヘコたれちゃうけど・・・
でも、まあソレなりに何とかやってゆこうと、想う。
私は私であり、ただソレだけでもうイイのだから。
そう。

ただソレだけでもう、イイのだから。



大大大大拍手で大大大大笑顔のライブは終了。
直後には恒例のサイン会があったんだけど、頭はぼーっとしちゃって、
体はふわふわしちゃって、誰とも話をしたくなくて、1人になりたくて、
客席横に仕切られたビニールシートと壁の間の空白スペースに飛び込んで、
ひっくりかえって大の字になって、口をあけっパナシにして天井を眺める。

胸は、変にバクバクいってる。
でも体中を温かい何かがじわ〜っと広がる。

胸がむうってなってきゅーんってなって、
そしたらね、何だかね、何に対してか、誰に対してかはわからないけどね、

『大好きだ〜!!!!』

なんて想いがぶわーって広がったのね。

そんな時にそんな事思うのは、
ねえ?
おかしいって

思う?


その日の夜も打ち上げと称した宴会。
私は相変わらずトロいけど。相変わらず変な事言ってる気もするけど。
でももう、何かそんなのどーでもイイや。私は私なんだもんねー!
なんて1人でふむふむ悦。

そして翌日の機材撤収の時にも引き続きふむふむしていると、アキラさんに
不意に「ソレにしても最高の働きだったね〜!」なんて褒められる。
え?別にむしろ足手まとい位だったと思うんですけど?なんて思いつつも、
褒められて嬉しくて有頂天満開になって頭から湯気が出そうな私に、
アキラさんは話ついでみたいなすっごい気軽な感じで
「ライブ主催、やらない?」なんて言う。

近くにいたタケちゃんまでが「おっ、主催やってみちゃう〜?」
なんて煽るから、舞い上がった私はつい
「えっ?あっ、ハイ。やっ・・・やります!主催やってみます!」
なんて超軽はずみな返事をしてしまう!

あわわわわわわ勢いとは言え、何言ってんだ私。
もちろんライブ主催なんてやった事ない。
何して良いか、どうして良いか、全然わかんないよ!

でも・・・
でも。うん。
やってみようかな?
きっと、そう。
もしかして大変な事ばっかりかも知れないけど、
でも、うん。
やってみる。
私やってみるよ!

だって今回スタッフやって、告知とかで街を色々回ってステキなお店を
新しく発見したし、お気に入りのお店にも協力してもらえたし、
前よりこの街の事を前よりもずっと好きになったのね。
ソレに何よりも、この街に住むステキな人達と出逢えて友達になれたし!
きっとそういう風に自分の街をもっと好きになれるし、
近所に住むONSENS繋がりの友達が出来るかも知れないし。
自分の街のみんなにも、ONSENSを生で体感させてあげたいし。

ソレに・・・ソレに主催やったら、更にステキな事・・・ありそうだし。
例えば・・・打ち合わせで連絡を密に取り合うから、
ONSENSのメンバー達とすっごく仲良くなれるとかね?

なんてちょっぴりヨコシマな事も想いつつ、アキラさんとタケちゃんに
「あの、私、本当に主催やってみようと思います!」なんて告げると
2人は子供みたいに大喜びして、挟みあっこしてハグしてくれて、
私は私で嬉し過ぎて「あうわ〜」なんて呻き声。



撤収を終え、駅まで送ってもらってみんなと手をふって別れる。
ライブが無事終わった安堵感からホウとため息をヒトツ。
ふと空を見上げるとぱかっとした青空を、細長くてちっこい秋雲が大勢で泳ぐ。
雲達があんまり楽しそうで、私はちょっとだけにんまり。

ホームにJRの車体が滑り込む。
私はゆっくりと列車に乗り込む。
発車を告げるベルの音が鳴り響く。

主催をやる怖さと、でも楽しみなのと、いっぱいいっぱいの想いを抱えた
私を乗せた快速列車はスピードを上げて走る走る。
びゅんびゅんびゅんびゅん。



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