サンターキー


クリスマスのその日、サンタの衣装に身を包んで、大勢で大騒ぎしながら東京を練り歩く
「サンターキー(Santarchy)」ってイベントが開催される、らしい。

そんな絶対に楽しいに違いないバカイベント、参加するしかねえじゃん!


つー訳で開催一ヶ月前位から「いやぁ。どんな風なサンタになろう!」とかフンフン鼻息も荒く
サンタ衣装手作り計画!とかするも、普通にまんまと時間も無くて、
前日に新宿のロフトでケープをはおるワンピタイプのミニスカサンタの衣装を5,000円前後で購入!
エスキモーみたいな毛足の長い白いふわふわファーの布をブーツにはりつけて
自分の中での「魔法少女(27歳)サンタ」をイメージ!

でもそんなカッコして「精霊がね・・・。」とか真顔で話すので
うっかり単なるゴスロリ好きの不思議ちゃんに見えなくも無い。
注意!


当日は12時に渋谷ハチ公前集合がまあ普通に寝坊して
14時位にとりあえず主催者マガリに電話すると現在地は代々木公園とのコト。
サンタ服の上にコートとか羽織って残りの荷物をコインロッカーに入れて現地へ向かう。


指定の原宿駅から代々木公園へ向かうもスッゲエ目立つハズのサンタ集団が全然見つからない。
焦って再度マガリに電話すると「太陽は今どっちの方向に見える?」とか聞かれる。
お前は日常的に太陽の位置とかで場所とか確認して生活してんのか!とか
ビックリし過ぎてうっかりリスペクトしそうになるも、ムダにちょっと、嬉しい。


ようやくサンタ集団に合流するとみんな本当にちゃんとサンタのカッコしててかなり笑える。
サンタ帽どころか何か青いウイッグつけてるヤツとか、ピカチュウの被り物してるヤツとか、
サンタ帽のてっぺんからアンテナ出てるヤツとか、ミニーのサンタ帽のヤツとか、
赤サンタじゃなくてピンクサンタとか、下半身はトナカイだとか、
サルのぬいぐるみにムリヤリ装飾をほどこしてトナカイにして連れてるヤツとか、
マガリなんて赤いシルクハットの上にツリーは乗っかってるわ、サンタ上着に沢山のベルが
ぶら下がってるわ、カラダ中に巻きつけた電球がピカピカしてるわで、正にやり過ぎサンタ番長。

つーかお前ら本当にバカだな!
つーか、バカばっかりだな!
つーか、むしろ、バカしかいねえよ!

こんなバカな集団と1日遊べるなんて何かスッゲエ嬉しくて合流1分でニコニコになる。


見たコトあるカオぶれとハグしたりしつつ、
初対面のヒトと良くわからないハナシをしたりしながら最後尾をテクテク歩いて代々木公園から
修学旅行で来た覚えのある原宿竹下通りへ。

・・・えーと、ハタチ位のオサレヤング達とかがいっぱいいて、何かスッゲエ道混んでるんですけど。
本当にこの道突っ切るの?
で?何?クレープ食べるの?ジャニーズショップでプリクラ撮るの?
・・・バッカだねえ!!


とりあえず人ごみをぐんぐん進む。
通りすがりのヒトに何度も「何の集団?何のキャンペーン?」とか聞かれるのでその度に

「単なるバカな大人の集まりです!」とか答える。

だってホント、ソレ以外何者でも無えよ!


気づけば微妙にサンタ本隊の列からハズれる。
交差点で本隊を待ちながら、同じく本隊からハズれつつもぞくぞくやってくるサンタ達に向かって
野太い声で「サンタは道路脇に寄って下さい!」とか腕を大きくふりつつ歩行者の為の導線確保。


そんな風にまた、ただただテクテクテクテク歩きつつ、
続いて銀座へ向かう地下鉄に乗る為に駅構内へシュルシュルと、潜る。

駅では普通にサンタのカッコしてるヤツが普通に切符買っててかなり笑う。
販売機の前には機械が未だ新千円札に対応して無くて切符買えないサンタがいたりして更に笑う。
非日常の中の日常。

さあケツモチサンタがきちんと仕事してサンタ全員集合だし、いよいよ地下鉄に乗り込もう!


プッシュー!
って、うわー、えーと、何か・・・

・・・変な車両!


何しろ乗ってるヤツが全員サンタ!
つーか座席に座ってるのサンタばっかりだし。サンタが普通につり革につかまってるし。
カーブで列車がぐいんってなっても、ぶつかってくるのは普通にサンタ!

つーかサンタしか乗ってない位の乗車率じゃん!むしろサンタ列車じゃん!つーかサンタ通勤じゃん!
つーか今更だけどお前ら赤いんだよ!赤いっつーか、むしろ赤過ぎるんだよ!


途中の駅から運良く乗ってきた他の乗客も相当ウレしそう!
いや私だってたまたま乗った列車にサンタが詰め込まれてたら相当ウレしいよ!

真っ赤な幸せがムンムン溢れかえるサンタ列車は走る走る。


そうしてようやく到着した銀座駅では運賃が足りなくて普通に清算機で差額を払ってるサンタがいて
やっぱりあまりの日常さ加減にまた更に、笑う。

駅を出て道すがら、サンタ服着たお姉ちゃんがワインの試飲販売やってて
集団サンタは「自分にも飲ませろ!」と鬼気迫る勢いで迫ったりする。
更に道すがら、ディスプレイの巨大なサンタバルーンに「お父さん!」とか抱きついたりする。
そんな風に、つーか本当にお前らバカだな!なんて言うしか無いコトしてるウチに
気づけば西の空は既にわしわしと群青色に。


街はもう既にちょっとおぼつかない位の薄暗闇。
でもショーウインドウはちょっとみとれちゃう位のクリスマス仕様。
燈色に染められた道路に沢山の大きな白い光が重なる。
信号待ちしてる車のライトが反射で横断歩道に小さな小さな虹をうつす。
葉っぱがくるくるくるくる舞う。

別に何か特別なコトしたり、別に何か特別な話したりする訳でも無いケド、でも、
何だか、カオを見合わせて、
笑っちゃうね。

そんな風に何だか嬉しくなっちゃってしょうがないので、立ち止まってはサンタの誰かとハグをする。
そんな風に何だか嬉しくなっちゃってしょうがないので、歩きながらサンタの誰かと手をつなぐ。

少し、肌寒いケド、何だか、嬉しいね。
少し足も疲れちゃったケド、もう少し、歩こうか。


そうして少しスキップ気味に、首にブラ下げたピースマークのシャボン玉を、「でへー。」ってカオして
アタマ悪いカンジでソレはもうプープープープー吹いてると、眩しさのプリズムが視界に飛び込んでくる。
「光の回廊」東京ミレナリオだ!

何万個もの電飾が施される、喜びへの入り口が、門の形状をして幾つも幾つも、連なる。
どんどんどんどん歩くのに、ピカピカアーチはずっとずっと、続く。
くぐってもくぐっても、キラキラアーチはどこまでもどこまでも、続く続く。
「凄いね。」「ビックリだね。」なんて呟くも、クチは開けっパナシにされッパナシ。

沢山の沢山の光が溢れる溢れる。

手をぎゅーって繋いでる家族連れやカップルでいっぱいの嬉しさのアーチの下、
サンタの誰かが英語で賛美歌を歌うよ。
サンタのみんなが続けて、歌う。
この幸福な場所には歌声さえも、満ちる。

サンタと、音楽と、光と、嬉しさに満たされる、ミレナリオ。

うわあ何てハッピークリスマス!
本当にこの上なく幸福なクリスマス!
ハッピーハッピーハッピー!クリスマス!だね!


そんな絶対的で圧倒的な幸福感をひらひらさせながら、国際フォーラムまでまたデケデケ歩いたんだ。

ホールの中で、せっかくなのでみんなで記念撮影とかして、
凄く仲良くなったサンタもいたケド、でも別に誰とも連絡先とかは交換せずに、
「またね。」なんて約束の無い約束をして、サンターキーは、解散。

美しい時間はいつだって泣きたい位に切なく素早く、過ぎ去ってしまう。
でも、みんな、またね。

またね。




うん。ええとね、サンターキーで何してたか。つうとね、
結局、サンタのカッコしてグダグダしゃべりながら、ただただ本当にブラブラ歩いてただけ。

別に何か目的がある訳でも無いし、
本当に何をする。って訳でも無い。

楽しいコトが大好きな、結構イイ年のバカな大人が集まって、
クリスマスを言い訳に大はしゃぎしてただけ。

本当にただ、ソレだけ。


でも、1日何してたんだか本当に全然訳がわからないケド、
ただ、サンタのみんなは本当に本当に、ずっとずっと、ニコニコニコニコ、笑ってた。

ソレだけは、確かなコト。



うん。あのね、クリスマスはキリストの誕生日がどうのこうの。なんて言うケド、
とりあえず街は華やいでるし、何か楽しいし、そんでイイじゃん。
何か浮かれるし、みんなテンション高いし、そんでイイじゃん。

嬉しかったら、ソレでイイじゃん。

ニコニコ出来たら、ソレでイイじゃん。

だから、うん、もう、ソレで、十分。じゃん。
ね?


そう、だから、祈るは全てのヒトに、ハッピーハッピーハッピー!!
クリスマス!!!!!

そして、全てのヒトに、ハッピーハッピーハッピー!!
サンターキー!!!!!

サンタのみんな、またね。

またね!



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